2026/08/17 ・ 大洲と読書
架神恭介・至道流星『リアル人生ゲーム完全攻略本』を読みました。
「人生」を一種のゲームに見立てて攻略法を語る、変わった構成の本です。
「仕事とは寿命(時間)をお金に変換する行為」という定義や、人生の最初の15~24年間を「チュートリアル 期間」と位置づける考え方が面白かったです。基本的なスキルを身につける期間、というわけです。
一方で、「なぜ規則(ルール)が行動を縛るのか」「けど、こんな設定の人生はわからない」と、ゲームの 前提を鵜呑みにせず、疑問もしっかり書き込んでいました。
「チュートリアル期間」に、そのまま当てはまる制度が大洲にあります。地域おこし協力隊です。任期は最長3年。その間は市から報酬が出て、地域に入って活動し、任期が明けたら自分で食べていく。まさに練習期間つきの移住です。
そのクリア率が、会議録に残っていました。令和4年6月の市議会の答弁です。
これまで市内に定住した地域おこし協力隊は8人中3人で、定着率は37.5%となっております。定住されなかった5人のうち3人は任期途中で退任され、新たな仕事等を求め転出され、2人は退任後、定住につながる仕事が見つからなかったようでございます
大洲市議会 令和4年6月定例会 会議録 徳永善彦副市長
同じ質問の中で、比較の数字も示されていました。地域おこし協力隊の定着率は全国平均65.3%、愛媛県は69.5%。大洲の37.5%は、そのおよそ半分です。
しかも5人のうち3人は、任期の途中で抜けています。チュートリアルを最後までやらずに、別のゲームへ移った形です。
令和3年12月の答弁には、もっと直接的なことが書かれていました。抜けた人の理由と、残った人の理由の両方です。
市外へ転出した元隊員の声として挙げられていたのは、「任期中に定住するためのなりわいが見つけられなかった」「やりたいことはあるが、起業するハードルが高い」の2つでした。
そして残った側について、市はこう述べています。「定住につながったのは、任期中から任期終了後の生活を見据え、具体的な職業を思い描いて活動していたことが理由の一つと考えております」。
チュートリアルの間に、次に就くジョブを決めておくこと。これはもう攻略本の一文だと思います。
市はこのあと、隊員を募集するかどうかを判断する前提条件として、隊員の役割、定住に向けた支援、寄り添える体制づくりが整っていることを挙げ、報酬額の見直しや退任後の起業支援、空き家取得改修補助などを並べていました。難易度を下げる側の調整が入ったことになります。
攻略本が無いと書きましたが、道具の一覧は毎年議会に出ています。令和6年12月の答弁に、移住・定住支援の補助制度が件数つきで並んでいました。
| 使えるもの | 令和5年度 | 令和6年度(年間見込み) |
|---|---|---|
| 空き家取得費・改修費補助金 | 10件 | 19件 |
| 空き家媒介手数料補助 | 51件 | 62件 |
| 新規移住就業者家賃補助 | 18件 | 32件 |
| 結婚新生活支援補助金 | 27件 | 41件 |
全体では件数で2.5倍、金額で3.6倍に伸びていて、当初予算2,900万円に1,000万円を追加する補正が組まれました。空き家取得費・改修費だけを見ても、前年度の実績500万円に対して1,000万円超の見込みです。
ただし、ここに注意書きが付きます。補助の申請件数・交付実績の平均132件のうち、移住者の世帯は約3割でした。残る7割は、もともと市内に住んでいる世帯です。移住者向けに見える制度の多くは、実際には地元の人が使っています。
補助金を活用した移住世帯の数そのものは、令和元年度から令和5年度の5か年平均で40世帯弱でした。
数字を並べてみて分かったのは、大洲の「人生ゲーム」には、道具の一覧はあるということでした。無いのは、どの順番でどれを使うかの説明です。
協力隊の37.5%と、市が挙げた「具体的な職業を思い描いて活動していた」という一文。この2つを並べると、攻略の分かれ目は制度の側ではなく、3年のあいだに自分の食い扶持を設計できたかどうかにあったことになります。
「仕事とは寿命(時間)をお金に変換する行為」という定義をこの本から借りるなら、大洲のチュートリアル期間は、その変換の仕方を自分で作らないといけない3年間だった、ということです。攻略本が作りにくいのも、たぶんそこが理由です。
「チュートリアル期間」という考え方は、大洲に移り住んできた人にもそのまま当てはまる気がします。
土地勘もなく、地域の人間関係もゼロから。最初の数年は、まさに大洲での暮らし方を学ぶチュートリアル期間なのかもしれません。
攻略本があれば移住のハードルも下がりそうですが、実際には試行錯誤しながら覚えていくしかないのが、 この土地の「人生ゲーム」の難しさであり、面白さでもあると思います。