大洲市のDX(デジタル化)、結局どこまで進んでいるの?

大洲市役所への道路案内標識
大洲市役所への道路案内標識(撮影: OZU LIFE MEMO)
メモう

大洲のデジタル化、計画も体制もしっかりしてるほうなんよ。

でも「それで何がどれだけよくなったか」の成績表は、探しても見つからなかった。

3行でいうと調べた資料 9本

  • 大洲市のDXは17戦略・54戦術の計画を、ほぼ毎年アクションプランに落とし込んでいる
  • 外部のCDO補佐官も置き、計画と体制はしっかりしている部類
  • ただし個々の施策がどこまで効いたかの「成績表」は、公開資料からは見つからなかった

大洲市のホームページを見ていると、「DX」という文字をよく見かける。

DX推進計画、アクションプラン、CDO補佐官。言葉は並んでいるけれど、結局どこまで進んでいるのか気になった。

「計画があります」で終わらせず、公開されている資料を実際に読んで、 今どこまで進んでいるのかを自分なりに検証してみることにした。

17の戦略、54の戦術という土台

大洲市は2022年3月(令和4年3月)、「大洲市デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」を策定した。

掲げている目的は、「市民や事業者の皆さんと共に、全地域・全産業をあげてデジタルリテラシーの向上を目指し」、 「誰もが自分らしく生きられる、大洲市民がみんな輝く社会の実現」を目指す、というもの。

この計画の中に、17の戦略と54の戦術が定められている。 かなり細かく体系立てて作られている印象を受けた。

アクションプランは、ほぼ毎年更新されている

17戦略54戦術という上位計画だけでは、実行力としては弱い。

そこで大洲市は「アクションプラン」という形で、毎年度、より具体的な施策・事業に落とし込んでいる。

令和5年度版から始まり、令和6年度版(2024年3月)、そして令和7年度版(2025年12月22日更新)と、 ほぼ毎年改訂され続けているらしい。

「事業の進捗や新規事業の追加など必要に応じて見直しを行い、よりよいソリューションの実装を図る」 という姿勢が明記されていて、計画を作って終わりにしていない点は素直に評価していいと思う。

実際に動いている施策は、地味だけど幅広い

令和6年度版のアクションプランを見ると、具体的な施策名がいくつも出てくる。

  • 採用試験のオンライン応募システム導入
  • 医療機関のオンライン資格確認・レセプトのオンライン請求システム導入
  • 保護者への一斉送信、保育所業務のデジタルシフト
  • 財務会計システムへの電子決裁導入
  • 愛媛県電子申請システムの共同利用への参画
  • 災害時の被害調査から罹災証明書発行までのデジタル化
  • WEB会議・オンラインセミナー開催環境の整備

どれも派手さはないけれど、行政の内部業務や窓口の一つひとつを地道にデジタル化している、という印象を受けた。

「DX」というと大きな構想を想像しがちだけど、実態はこういう小さな積み重ねの集合体なんだと思う。

ちなみに2022年4月にはNTT西日本と連携協定を結び、2026年3月末には市独自の「サイバーセキュリティを確保するための方針」も策定されている。地味に足回りも固めているようだ。

外部人材を「軽い形」で継続的に巻き込む仕組み

もう一つ気になっていたのが、CDO(最高デジタル責任者)補佐官という役職。

2022年7月、元東京都議会議員で、選挙情報サイト「選挙ドットコム」編集長も務める鈴木邦和氏が委嘱された。

勤務条件は、月額273,800円(通勤費なし)、週2日程度のテレワーク、月1回程度の登庁というかなり軽量な体制。

任期は本来2023年3月末までだが、市長が必要と認めれば再委嘱できる仕組みになっている。

広報おおずには「DXのすゝめ」という連載コラムがあり、2025年9月時点の第32回まで発行が確認できた。 少なくとも3年以上、この体制が続いていることになる。

フルタイムで採用するのではなく、「補佐官」という軽い形で外部の専門家を継続的に巻き込む。 身の丈に合った、現実的なやり方だと思う。

まだ課題も見える。マイナンバーカードの「その先」

一方で、まだ課題も見えてきた。

大洲市のマイナンバーカード取得率はすでに6割を超えているそうだ。

ただ、実際にカードを使って便利になったと感じられるサービスは、まだ限られているらしい。

この課題を解決しようという「大洲市DX推進官民共創プロジェクト」も動いているようだが、 具体的にどんなサービスが、いつ実現するのかまでは、今回確認した資料からは分からなかった。

結局、どこまで進んでいるのか

ここまで調べてみて、率直な感想を書く。

「計画」と「体制」という面では、大洲市のDXはかなりしっかりしていると思う。

17戦略54戦術という土台があり、それを毎年アクションプランで具体化し、外部専門家も継続的に関わっている。

ただ、それぞれの施策がどこまで進んだのか、効果がどれくらい出ているのかを一覧で示すような 「成績表」のようなものは、少なくとも今回確認した公開ページからは見当たらなかった。

正直に書くと、個々の施策の進捗率や効果測定の詳細は、公開資料からは確認できなかった、 というのが今回の結論に近い。

「計画を作って放置」ではなく、地道に更新し続けている実行力は評価したい。

ただそれが市民にとって「便利になった」という実感につながっているかどうかは、また別の話だと思う。

「成績表」を探して、別のものが出てきた

この記事は「個々の施策がどこまで効いたかの成績表は見つからなかった」と書いて公開した。 その後、市議会の会議録を調べ直した。

成績表そのものは、やはり出てこなかった。 代わりに出てきたのが、アクションプランの中で予算が0円になった項目と、その理由である。

令和8年3月の定例会。議員がアクションプランの令和7年度版を読み込んで、こう質問している。 「職員の生成AI活用に関する事業名、生成AIサービス活用事業について、 令和7年度以降の予算が年間110万円から0円に修正されておりました」。

計画は毎年更新されている、とこの記事で書いた。 その更新の中で、消えていた項目があったということになる。

110万円が0円になった理由

市の総合政策部長の答弁は、こうだった。順に整理する。

年度何が起きたか
令和6年度当初予算に有料サービスの導入費用を計上していた
生成AIが短期間で飛躍的に進歩し、行政向けサービスも次々登場したため、市に適したサービスを改めて研究する必要があると判断して導入を見送り
令和7年度有償版を入れても稼働率の面で課題があったため、予算化を見送り
令和8年度外部に学習されない環境で使える有償版を、試験的に1ライセンス導入して活用方法を研究

0円は、やめたという意味ではなかった。 買うつもりで予算を取ったが、市場が動きすぎていて選べなかった、という話である。

その間、職員は無料版を使っている。 「職員が生成AIを使用して、どのように業務改善に活用できるか体験できるよう、 一定のルールの下で無償版の生成AIサービスを利用することを認めております」という答弁だった。

令和8年度に入れる1ライセンスで何を確かめるのかも、再質問への答えで具体的に述べられている。 住民情報系統のシステムを使っているのでセキュリティ面で問題がないかインターネットの接続環境をある程度厳しくしているので動作するか。 そのうえで、入力してはいけない情報のルールや回答の使い方をガイドラインに盛り込み、 職員研修まで整った段階で本格導入に進む、という順番だった。

さらに、そのサービスには議事録の文字起こし機能とウェブ会議機能も付いているので、 いま個別に導入しているウェブ会議システムや文字起こしソフトの代わりになるかどうかも あわせて検証する、と述べている。 1本入れて3本減らせるかを見ている、ということになる。

ガイドラインについては、令和8年度中に作成すると明言されていた。

効果の試算が、議会で1つ出ている

成績表がないなら、せめて見込みはあるのか。 同じ質問の中に、議員自身が計算した数字があった。

前提は、一般行政部門386名のうち半数が1日10分業務を短縮した場合。 年間労働日数を240日、時給を3,000円と仮定する。 すると年間で約2,300万円の削減効果になる、という試算である。

仮定を置いた単純計算であることは、質問者自身が 「もちろんこれは単純計算で、すぐにこれだけの支出が減るわけではありません」と断っている。 それでも「残業削減や住民対応の質向上など、政策的な効果は十分見込める」とも述べていた。

この試算を実際にたどってみた。386人の半数は193人。1日10分を240日で年40時間。 193人分で7,720時間。時給3,000円をかけると2,316万円になる。 議会で述べられた約2,300万円と合う。

DXの成果は、人件費のほうに出ていた

成績表を探していて、いちばん納得したのはここだった。 大洲市のDXの効果は、別の議案の中に金額として現れていた。

令和8年3月の定例会で、フルタイムの会計年度任用職員 23部署83人の勤務時間が、1日7時間45分から7時間に変更された。 これにより退職手当5,679万9,000円と共済費209万2,000円、合わせて5,889万1,000円が 減額されている。

その理由として説明されたのが、「コンビニ交付とデジタルでやれるようになったから」である。

コンビニ交付は、この記事に書いたDX推進計画の施策の1つだ。 窓口に来なくても証明書が取れるようになれば、窓口に必要な時間が減る。 その結果が、45分という数字になって出ている。

同じ議会で市は、こうも述べていた。 「デジタルトランスフォーメーションの推進やAIの技術を活用し、 前例にとらわれることなく事務事業を抜本的に見直すことで、歳出の削減に努めながら」。 DXは、財政の話として語られている。

背景にある数字も添えておく。市の経常収支比率は99.7%。 職員数は合併当初の880名ほどから令和7年4月で640名ほど、約27%減っている。 人を減らしながらサービスを保つ手段として、DXが位置づけられているという構図である。

調べる前は、DXの成績表というのは「電子申請が何件増えた」といった数字だと思っていた。 実際に議会で語られていたのは、入れなかったライセンスの理由と、 減った45分と、5,889万1,000円だった。 効いているかどうかは、人件費の欄に出る。 それがこの記事で最後に分かったことである。