大洲市社協の収支は5.8億円。「介護保険事業」が52%を占める実態

大洲市総合福祉センターの建物
大洲市総合福祉センターの建物(撮影: OZU LIFE MEMO)
メモう

社会福祉協議会って、ボランティアの団体だと思ってた?

年間5億円以上を動かしてるんよ。

収入の半分は介護のお仕事。市内でも有数の介護事業者でもあるの。メモう!

3行でいうと調べた資料 6本

  • 大洲市社協の年間収入は5.8億円。ボランティア団体のイメージよりずっと大きい
  • 収入の52%は介護保険事業。実質的には市内有数の介護サービス事業者でもある
  • 支出の4分の3は人件費。サロン支援や独居高齢者の安否確認など地道な活動も担う

社協だより」に載っていた令和7年度の決算概要を見て、正直びっくりした。

大洲市社会福祉協議会の年間収入は578,794,937円、約5.8億円

ボランティア団体というイメージからすると、かなり大きい金額に見える。

中身を見ていくと、そのイメージとのギャップの理由が分かってきた。

収入の半分は「介護保険事業」

収入の内訳(上位)は次のとおり。

  • 介護保険事業 301,522,840円(全体の約52%)
  • 経常経費補助金 109,259,814円
  • 受託金 103,167,765円
  • 寄附金 35,803,687円
  • 障害福祉サービス等事業 19,294,190円
  • 会費 3,796,350円
令和7年度 収入の内訳(上位4項目)
介護保険事業
約3.0億円
経常経費補助金
約1.1億円
受託金
約1.0億円
寄附金
約3,580万円
出典: 社協だより2026年8月号(大洲市社会福祉協議会) 令和7年度決算概要

一番大きいのは「介護保険事業」。訪問介護・通所介護(デイサービス)・訪問入浴介護・居宅介護支援といった、公的介護保険制度に基づくサービスの対価が、収入の半分以上を占めている。

つまり大洲市社協は、地域住民の助け合いを支える組織であると同時に、実質的には市内有数の介護サービス事業者でもある、ということだ。

会費(約380万円)や寄附金(約3,580万円)は、全体からするとかなり小さな割合にとどまっている。

次に大きい「経常経費補助金」1億925万円が、どこから来ているのかを市の側から確かめてみた。

大洲市の令和8年度一般会計当初予算書を開くと、民生費の社会福祉総務費のなかに「市社会福祉協議会補助金 9,387万2千円」という項目がある。自立相談支援事業や地域福祉基金運用事業と並ぶ、独立した事業として立てられていた。

年度が1年ずれるので額はぴったり重ならないが、社協の経常経費補助金の大部分は市の一般会計から出ているとみてよさそうだ。

介護保険事業でみずから稼ぐ約3億円と、市から入る約9,400万円。この二本立てが、社協の財政を支えている。

支出の4分の3は人件費

支出の内訳(上位)は次のとおり。

  • 人件費 431,798,363円(全体の約75%)
  • 事務費 62,184,519円
  • 事業費 23,888,727円
  • 助成金 13,380,030円
  • 共同募金配分金事業費 7,439,241円
令和7年度 支出の内訳(上位3項目)
人件費
約4.3億円
事務費
約6,218万円
事業費
約2,389万円
出典: 社協だより2026年8月号(大洲市社会福祉協議会) 令和7年度決算概要

支出の4分の3が人件費というのも、介護・福祉が「人の手」に支えられた労働集約型のサービスであることをそのまま表している。

ヘルパーや相談員、地域支援の職員など、大洲市内の高齢者・障がい者の生活を直接支える人たちの給与に、この予算の大半が使われているということだ。

金額に表れにくい地道な活動

事業の中身を見ると、地域の「ふれあい・いきいきサロン104か所の支援、独居高齢者への安否確認 (月1回、869件)、生活困窮者自立支援の新規相談138件が並ぶ。フードパントリー事業(配布延べ653件)もあり、 協力団体にはオズメッセやマルナカ大洲店の名前も見える。金額には表れにくい地道な活動も多い。

なお、障がい者のA型・B型事業所に関する具体的な内訳は、今回の決算資料からは確認できなかった。

「障害福祉サービス等事業」という区分(約1,930万円)の中に含まれている可能性はあるが、詳細は公開資料の範囲では分からない。

決算の数字には出てこない相談・貸付事業も調べてみた。地域住民の善意の預託を社会に還元する「まごころ銀行」には、令和7年度、一般・指定あわせて100件・約479万円(4,793,687円)の預託があった。

低所得世帯向けの生活福祉資金貸付事業には相談が延べ452件寄せられ、実際の貸付に至ったのは16件

判断能力に不安のある高齢者らを支える「大洲市成年後見サポートセンター」にも、新規相談が43件あった。

決算書に載る5.8億円という大きな金額の裏には、こうした一件一件の相談・貸付・預託の積み重ねがある。

「社会福祉協議会」という名前だけを見ると漠然としているが、決算を数字で追うと、地域の助け合いの 「事務局」であると同時に、公的介護保険制度を支える大きな事業体でもある、という二つの顔が 見えてくる。

5.8億円で、実際に何が行われているのか

ここまでは決算の表を読んできた。金額は分かったが、 その先で何が起きているのかは、決算書には書いていない。

そこで、市議会の会議録を「社会福祉協議会」で探した。 市の答弁や議員の発言の中に、社協の名前が出てくる場面を拾っていくと、 決算の数字とは別の顔が見えてきた。

「心配ごと相談」は、年間200件前後ある

令和7年12月の定例会で、市が自殺対策について答弁している。 その中に、社協の窓口の数字があった。

大洲市社会福祉協議会が実施している「心配ごと相談」は、年間200件前後。 同じ答弁で、保健師による「こころの相談」は年間延べ30件程度だと述べられている。

並べると、社協の窓口のほうが、市の保健師の窓口よりずっと多くの相談を受けていることになる。 悩みを抱えた人が最初に行く先として、社協が使われている、という話だ。

同じ答弁が示していた大洲の状況も、あわせて書いておく。 令和元年から令和5年までの5年間で、市内の自殺で亡くなった方は男性23人・女性7人。 人口10万人あたりに直すと、40歳代の男性が全国平均27.1人に対して54.0人70歳代の女性が全国平均12.4人に対して24.9人と高い。 原因は健康問題が37.5%で最も多く、原因不詳が約3割を占めている。

決算書の「受託金 約1.0億円」という行の向こう側に、 こういう200件がある、ということだと思う。

手話の講座は、31年続いている

令和8年6月の定例会に、社協のいちばん長い仕事が出てきた。 愛媛県が手話言語の条例を作ったことを受けて、議員が大洲の状況を述べた場面である。

当市では、平成7年から社会福祉協議会主催で始められた手話奉仕員養成講座は、現在も大洲市の委託を受けながら継続されており、それを機に、手話サークルも立ち上がっておりますので、学ぶ機会の確保、情報発信、学校おける手話の普及啓発、手話通訳者の確保・養成については、大洲市社協の御尽力により確保されております

大洲市議会 令和8年6月定例会(3日目)会議録

平成7年(1995年)から。この記事を書いている2026年まで、31年である。 合併して大洲市の形が変わるより10年前から始まっていて、いまも続いている。

注目したいのは「大洲市の委託を受けながら」という部分だ。 決算の収入欄にあった「受託金 103,167,765円」という項目は、 こういう事業のことを指している。 市が自分でやらずに社協へ渡している仕事が、1億円分あるということになる。

災害のときの名簿も、社協と一緒に作っている

令和8年6月の定例会には、個別避難計画の話も出ていた。 自力で逃げるのが難しい人ごとに、誰がどう助けるかを事前に決めておく計画のことである。

市の答弁によれば、令和2年度から進めていて、 令和8年3月末で対象者1,537人のうち820人ぶんが作成済み、作成率53.4%。 今後も「福祉事務所や社会福祉協議会をはじめとした関係機関と連携し」 作成率を上げていきたい、と述べている。

1,537人という数字は、大洲市の中で、災害のときに自力で避難するのが難しいと市が把握している人の数である。 その半分弱、717人ぶんはまだ計画がない。 この差を埋める作業に社協が入っている。

高齢者への情報の届け方についても、同じ答弁で 大洲市老人クラブ連合会や市の社会福祉協議会などの関係団体と連携して 防災教育の機会をつくることを検討している、と述べられていた。

なお、この答弁が引いていた総務省の調査によると、 スマートフォンの保有率は60歳で87%、70歳以上で67.5%、80歳以上では30%まで下がる。 デジタルで届かない人がいる、というのが、こうした対面の仕組みが必要な理由になっている。

お金の話の裏に、担い手の話がある

最後に、決算書からはいちばん遠いところにある話を書いておきたい。

令和7年9月の定例会で、議員が民生委員のなり手について発言している。 自分の地区で候補を探して回ったときの話だ。

その中で、断られる理由として挙がったのが 「民生委員さんになったら弁当作りせないけん」という認識だった。 これは地区社協が担当している仕事だが、民生委員の仕事だと受け取られている、と。

もう1つ挙がっていたのが共同募金である。 国道56号沿いに商店が多い喜多地区では大口の募金がそれなりに集まっていて、 その担当が民生委員に回っている。議員の言葉では 「非常に民生委員さんから見て大きな苦痛になっとる」。

なり手が減っている理由も述べられていた。 昔は60歳で年金をもらいながら引き受ける人が多かったが、 いまは共働きが増えて70歳近くまで働いているので、引き受けられる人が少ない、という話である。

決算書に載っていた寄附金 約3,580万円という数字は、 こうして1軒ずつ回って集められたお金でもある。 金額の欄には、それを集めて回る人の数は書いていない。

収入5.8億円の半分が介護保険事業だ、というのがこの記事の入口だった。 調べ終えてみると、残りの半分のほうが読んでいて重かった。 31年続く手話の講座、年200件の相談、 まだ半分しか埋まっていない1,537人分の避難計画、 そして弁当と募金を頼まれて断られる民生委員探し。 「社協は何をしているところか」への答えは、たぶんこちら側にある。