大洲の暮らし ・ 出典: 大洲市立図書館要覧・四国公共図書館協議会・日本図書館協会・大洲市議会会議録(情報源日付: 2026-04-01) ・ 約12分で読める
大洲市民1人が図書館で借りる本、年に3.3冊。県内では下から2番目なんよ。
ほんでも本は全国平均の1.8倍あるし、館も4つある。足りんのは本やない。
実際に借りた人は3,382人。その人らは年37冊も借りとるんよ。
3行でいうと調べた資料 30本
大洲市立図書館で、去年1年間に何冊の本が貸し出されたか。考えたことのある人は、たぶん少ない。
答えは12万5,274冊だった。令和7年度、つまり2025年4月から2026年3月までの1年間である。
市民1人あたりに直すと年3.3冊。3か月半に1冊のペースだ。
この数字が多いのか少ないのか、県内と全国に並べてみた。すると、大洲の図書館の不思議な形が見えてきた。
先に、どう計算したかを書いておく。市が「1人あたり◯冊」という数字を公表しているわけではないので、ここは自分で割り算をした。
分子に使ったのは、大洲市立図書館が毎年出している図書館要覧の令和7年度分だ。個人への貸出冊数は、本館11万3,408冊、長浜分館7,891冊、肱川分館3,790冊、河辺分館185冊。合計で12万5,274冊になる。
この12万5,274冊には、図書11万7,707冊のほかに雑誌3,120冊とCD・DVD4,447冊が含まれている。あとで比べる全国統計も視聴覚資料を含む数え方なので、ものさしはそろっている。
いっぽうで、学校や公民館にまとめて本を配る団体貸出は含めていない。団体貸出は令和6年度で1万9,002冊あり、個人の貸出とは別に集計されている。「1人あたり」を出すなら、個人が自分で借りた分だけを使うほうが実態に近い。
分母は、2026年4月時点の大洲市の住民基本台帳人口3万7,931人を使った。国土地理協会が市区町村別にまとめた数字である。年度末の人口で、その年度の貸出を割った形になる。
12万5,274 ÷ 3万7,931 = 3.30冊。これが今回の記事の中心になる数字だ。
比べるには、同じ年度・同じ定義の数字が要る。ちょうどいい資料があった。四国4県の図書館が毎年出している「四国の公共図書館 統計編」だ。館ごとの貸出冊数と、その市町の人口が同じ表に載っている。
最新版は令和6年度の実績で、人口は2025年4月1日現在。同じ表から愛媛県の11市を計算した。
| 市 | 個人貸出冊数 | 人口 | 市民1人あたり |
|---|---|---|---|
| 四国中央市 ※ | 555,405 | 80,386 | 6.91冊 |
| 西条市 | 565,974 | 102,924 | 5.50冊 |
| 東温市 | 174,630 | 32,756 | 5.33冊 |
| 新居浜市 | 583,830 | 111,950 | 5.22冊 |
| 今治市 | 694,629 | 141,633 | 4.90冊 |
| 八幡浜市 | 139,035 | 29,625 | 4.69冊 |
| 伊予市 | 157,055 | 34,992 | 4.49冊 |
| 西予市 | 140,113 | 33,307 | 4.21冊 |
| 松山市 | 1,660,396 | 495,801 | 3.35冊 |
| 大洲市 | 128,890 | 38,692 | 3.33冊 |
| 宇和島市 | 182,339 | 66,234 | 2.75冊 |
※四国中央市は電子書籍の貸出冊数が4つの館すべてに同じ数字(11万2,003冊)で載っており、市全体の合計に重複が含まれている可能性がある。参考値として示した。
大洲市は11市のうち10番目だった。下から数えて2番目である。
人口規模の近いところを見ると、差はもっとはっきりする。伊予市3万4,992人で4.49冊、西予市3万3,307人で4.21冊、東温市3万2,756人で5.33冊、八幡浜市2万9,625人で4.69冊。人口4万人前後の市のなかで、大洲だけが3冊台にいる。
全国とも比べておく。日本図書館協会の令和6年度の集計では、全国の市区立図書館の個人貸出は5億5,360万3千点、市区の人口は1億1,456万6千人。割ると1人あたり4.83点になる。大洲市の3.33冊は、その約7割だ。
念のため書いておくと、開館日数の差ではない。大洲市立図書館の令和6年度の開館日数は288日で、県内では真ん中あたりにある。いちばん多いのは宇和島市の340日だが、その宇和島市が11市で最も低い2.75冊だった。開けている日数と借りられる冊数は、素直には結びついていない。
では、本が少ないのか。逆だった。
大洲市立図書館4館の令和7年度末の蔵書は21万9,473冊。市民1人あたり5.8冊になる。全国の市区立図書館は1人あたり3.17冊なので、大洲は全国平均の1.8倍の本を持っている。
館の数も少なくない。本館のほかに長浜・肱川・河辺の3分館があり、人口3万7,931人に対して4館。1館あたり9,483人の計算になる。全国は図書館3,318館に対して人口1億2,488万5千人だから、1館あたり3万7,639人だ。大洲は全国のおよそ4倍の密度で図書館を持っている。
本を買うお金も平均以上だ。令和7年度予算の資料費は1,063万2千円で、市民1人あたり275円。日本図書館協会の集計から全国平均を出すと1人234円である。ただし令和6年度の資料費は1,270万5千円だったので、1年で16パーセント減っている。ここは今後の注意点だ。
人はどうか。4館合わせて24人が働いている。ただし内訳を見ると景色が変わる。正規の専任職員は本館の2人だけで、残る22人は兼任・非常勤・臨時である。司書の資格を持つ人は24人中9人。長浜・肱川・河辺の3分館にいる9人については、統計に司書の記載がない。令和8年3月の市議会でも、県内の図書館の司書の少なさが話題に出ている。
本もある。館もある。資料費も出ている。それでも貸出は県内で下から2番目という形になっている。
では、誰が借りているのか。図書館要覧に、この問いに直接答える数字があった。
有効登録者数3,382人。要覧はこれを「全登録者のうち年度内に図書館を利用した登録者数」と定義している。つまり令和7年度に実際に図書館を使った人が、3,382人だったということだ。
大洲市の人口で割ると、市民のおよそ11人に1人にあたる。ただし注意が要る。この数字は本館3,104人・長浜160人・肱川97人・河辺21人の単純な足し算なので、複数の館を使う人は二重に数えられている。また利用者カードは隣接市町の住民にも発行されるため、全員が大洲市民とは限らない。実際に借りている大洲市民は、11人に1人よりさらに少ない可能性が高い。
いっぽう、カードを作ったことのある人の累計は2万617人いる。人口の54パーセントにあたる。作った人の6人に1人しか、その年に使っていないことになる。
そして、使っている人はよく使っている。12万5,274冊を3,382人で割ると、1人あたり年37冊。延べの貸出者数は4万6,560人なので、1人が1回に借りるのは平均2.7冊。図書は1回5冊まで借りられるから、上限の半分強である。
年齢層別に見ると、貸出冊数のうち一般が9万9,401冊、児童が2万1,127冊、学生(13〜18歳)が4,746冊だった。中高生の借りる本は全体の4パーセント弱しかない。
分館の数字も書いておく。河辺分館の令和7年度の個人貸出は185冊だった。291日開けて185冊なので、1日あたり0.6冊である。河辺地区の人口は502人(令和2年国勢調査)。住民基本台帳では令和8年3月末で470人まで減っている。有効登録者は21人だった。
いまの図書館がどこから来たのかを見ておく。
大洲市立図書館の始まりは昭和30年6月、大洲公会堂の中の一室だった。昭和45年に旧記念館の跡地へ新築し、平成17年1月の1市2町1村の合併で、長浜・肱川・河辺の図書館・図書室が分館として加わった。4館体制は合併でできた形である。
現在の東若宮の建物は平成21年1月11日にオープンした。合併記念日にあわせた開館だ。財源については、令和8年3月の市議会で市長がはっきり答えている。合併直後は実質公債費比率が23.1パーセントに達し、市債の借入れに国や県の許可が要る状況だった。そのなかで「本市において合併初期に合併特例債を活用して実施できた主な事業は、市立図書館と学校給食センターの整備」だったという。厳しい財政のなかで優先して建てられた2つのうちの1つが、図書館だったことになる。総事業費は当初計画の13億円から、内容の見直しと入札減で11億9,000万円程度まで圧縮された。
その新館の最初の年、平成21年度の個人貸出は20万9,593冊だった。当時の人口4万8,811人で割ると1人あたり4.29冊。いまの3.30冊とはずいぶん違う。
そこからの推移を並べる。
| 年度 | 個人貸出冊数 | できごと |
|---|---|---|
| 平成26年度 | 169,875 | |
| 平成27年度 | 167,864 | 5月 新館来館者100万人 |
| 平成28年度 | 171,688 | |
| 平成29年度 | 165,939 | |
| 平成30年度 | 132,243 | 7月 西日本豪雨で被災 |
| 令和元年度 | 144,967 | 6月 通常開館に復帰、10月 来館者150万人 |
| 令和2年度 | 144,069 | 4〜5月 コロナで臨時休館 |
| 令和3年度 | 127,069 | 4〜5月 臨時休館、利用制限 |
| 令和4年度 | 139,408 | |
| 令和5年度 | 134,010 | 7月 肱川分館が複合施設へ移転 |
| 令和6年度 | 128,890 | |
| 令和7年度 | 125,274 | 8月 来館者200万人 |
平成30年7月の西日本豪雨では、本館が床上10センチ、肱川分館は床上270センチ浸水した。本館は7月31日まで臨時休館し、平成31年1月14日から令和元年6月14日まで災害復旧工事で縮小開館。肱川分館の業務再開は令和元年6月1日だった。平成30年度に貸出が3万冊以上落ちたのは、この年である。
コロナ禍では令和2年と令和3年の春に臨時休館があり、令和3年度に12万7,069冊まで落ちた。ただし翌年に13万9,408冊まで戻している。コロナで落ちた分は、いったん回復した。その後もう一度、静かに下がり続けているのがいまの局面だ。
来館者の節目でも同じ傾向が読める。新館の来館者は平成23年11月に50万人、平成27年5月に100万人、令和元年10月に150万人、そして令和7年8月26日に200万人に達した。50万人ずつの区切りにかかった時間は、3年半、4年5か月、5年10か月と伸びている。年あたりの来館ペースは14万人から8万6千人へ落ちた。
人口も減っているので、貸出が減るのは当然という見方はできる。ただし平成21年度から令和7年度で人口は約22パーセント減り、個人貸出は約40パーセント減った。人口の減り方より、貸出の減り方のほうが速い。
「で、その後どうなったのか」を追える話が、市議会の会議録にいくつも残っていた。結論から書くと、検討すると答えたものは、いまのところどれも実現していない。
電子図書館。令和3年6月の市議会で議員が導入を求めた。教育長の答弁は数字つきだった。和書のコンテンツが約9万2,000件しかないこと、公共図書館向けの提供が紙の新刊から2〜3年遅れること、そして「これらのことを総合して計算してみますと、10年間で1億円程度必要」になること。結論は「現在のところ、大洲市立図書館におきましては、電子図書館サービスの導入は、予定しておりません」だった。
その後どうなったか。令和7年12月の決算特別委員会でも「電子図書の導入についても意見をいただいているが、多額の費用を要することなどから現時点では導入に至っていない。市としては、今はまず本に親しむことを優先して考えていきたい」という答弁が残っている。統計で確認しても、大洲市立図書館の電子書籍貸出冊数は令和6年度も0冊である。愛媛県内では今治市・宇和島市・新居浜市・西条市・四国中央市・砥部町・伊方町の7市町が電子書籍を貸し出しており、宇和島市は1万8,811冊、砥部町は3万5,953冊を記録している。
読書通帳。令和2年3月の市議会で議員が、富山県立山町の視察をもとに導入を求めた。教育長の答弁は「以前から注目し、導入を研究していた」としつつ、県の「みきゃん通帳」を代わりに使っていること、機械の導入に約300万円かかることを挙げ、「効果を見きわめながら検討してまいります」で終わっている。令和8年度版の図書館要覧の沿革に、読書通帳の記載はない。
開館時間。平成22年の市議会には、9月から11月まで木曜日だけ開館を1時間ずらし、午前10時30分から午後7時までにする試行の記録がある。夕方の利用者数のデータを取り、今後の検討の基礎資料にするという説明だった。さらに平成27年の第3期集中改革プランには「市立図書館の開館時間延長の検討」が市民サービス向上の項目として並んでいる。しかし令和8年現在の開館時間は午前9時30分から午後6時まで。11年前と同じである。
移動図書館。大洲市に自動車図書館はない。県内では松山市・今治市・八幡浜市・新居浜市・西条市・東温市・久万高原町の7市町が走らせている。ただし大洲市も、公用車でコミュニティセンターや小学校に本を運ぶ巡回文庫を続けており、令和7年度は1万59冊を配った。この本は市の蔵書ではなく、愛媛県立図書館から借り受けたものだ。
新館ができて5か月後の平成21年6月、議員がこう質問している。
「これだけの施設、11億5,000万円をかけたこの立派な施設が、ややもすると無料の貸し本屋的な活用にとどまることは非常にもったいなく感じております」
そのうえで、司書を養成してビジネスの創業支援のような機能を付けてはどうか、と提案した。教育長は「オープンして間もないことから、まずは図書の利用者へのレファレンス」を中心にしていると答え、ビジネス支援などは「運営体制の充実とあわせて検討してまいりたい」とした。
17年後の数字を見る。令和6年度のレファレンス(調べもの相談)の受付は2,833件。開館288日で割ると1日およそ10件だ。予約・リクエストの処理は7,802件あった。少ない数字ではない。ただし図書館の施設案内に、ビジネス支援のコーナーは今もない。
子どもの側は、悪い話ばかりではなかった。令和7年12月の市議会で市が示した調査では、1か月に1冊も本を読まない不読率は小学生0.9パーセント、中学生4.9パーセント、就学前児6.3パーセントで、いずれも前年より改善している。いっぽう令和6年3月の議会では、全国学力・学習状況調査の質問紙で「例年読書習慣に関する項目が全国平均より低い状態であることを教育委員会としても危惧しております」とも答弁されていた。読まない子は少ないが、読む時間は短い。そういう形に見える。
調べていて意外だったのは、この記事で出てきた数字のほとんどが「足りない」の話ではなかったことだ。本は全国平均の1.8倍あり、館は4つあり、資料費も平均より多い。10年以上前に検討すると言われたことが実現していないのは事実だが、電子図書館を入れたところで3.3冊が4.8冊になるとは思えない。
残るのは3,382という数字である。この1年、大洲市立図書館で実際に本を借りた人の数だ。その人たちは1人で年37冊を借りていて、明らかに図書館を使いこなしている。増やす余地があるとすれば、1人あたりの冊数ではなく、この3,382という人数のほうだろう。ただしどうすれば増えるのかは、今回調べた資料の範囲では分からなかった。ここから先は推測になる。
ひとつだけ確かなことがある。市民1人あたり3.3冊という数字は、市民が本を読まなくなった証拠ではない。11人のうち10人が、そもそも借りていないだけである。
この記事をサイトに掲載した日: 2026/09/03