「市民ポスト」に出した意見は返ってくるのか。回答76本を数えた

メモう

市役所のロビーにある「市民ポスト」、入れた紙は市長まで回るんだって。

返事は市のサイトに残っとって、8年半ぶんで76本あったの。

ただし載るのは、出した人が公表していいと言った分だけなんよ。

3行でいうと調べた資料 13本

  • 市民ポストに入れた提言は企画情報課が受け取り、市長まで回覧されると市が説明している
  • 市のサイトに公開されている回答は76本2018年からの8年半ぶんが全文のまま残っている
  • 公開されるのは投稿者が公表を認めた分だけ。令和5年度は提言16件に対し7本だった

大洲市役所のロビーの待合場所に、意見を入れる箱がある。

市民ポスト」という。

紙に書いて入れると、市が答えてくれる仕組みだ。

ただ、入れた紙がそのあとどこへ行くのかは、箱を見ただけでは分からない。

誰かの机で止まるのか、それとも本当に返ってくるのか。

市のサイトには、その回答が並んだページがある。1本ずつ数えてみた。

出した紙は、まず市長まで回る

手順を市自身が説明した文章が、2つ残っている。

ひとつは市議会の会議録だ。2024年12月定例会で、公益通報・内部通報・市民ポスト・投書の扱いをまとめて問われた総務部長が、市民ポストについてこう答えている。投函された提言用紙は「受理後、まず市長まで閲覧されます」。そのうえで本人の希望を踏まえて回答の要否を判断し、回答を要するものは関係部署が処理して手紙などで答える。「回答内容については、原則、市ホームページで公開し、所管部署は迅速かつ誠実な対応を前提として施策及び事業への反映に努めることと定めております」。

もうひとつは、市民ポストそのものについて出された提言への回答だ。2025年7月25日に公開されたその回答は、投函から回答までの流れをもっと細かく書いている。

「市民ポストに寄せられたご意見・ご提案は、まず企画情報課で収受され、内容に応じて関係する部局から市長まで回覧・共有されます。回答については、内容に関係する業務の担当者で回答案を作成したのち、関係部局内で承認を受けたものを回答とさせていただいております」

つまり、担当者が思いつきで返事を書いているのではない。回答案は部局内の承認を通る。

同じ回答には、こうも書いてある。「なお、市議には共有しておりませんが、公表しても可となっている意見については、市公式ホームページで誰でも閲覧可能としております」。

箱は市役所本庁だけにあるわけではない。各支所と、21のコミュニティセンターにも置かれている。若宮・五郎・田口・肱川中央・正山・大谷・岩谷・予子林・河辺の9か所を除く、と市は具体的に列挙している。

公開されている回答を数えたら、76本あった

市のサイトには、市民ポストの回答だけを集めた一覧ページがある。

そこに並ぶ回答ページを1本ずつ数えた。インターネット・アーカイブに残る2026年6月6日時点の保存版で75本。そこに2026年9月2日付でもう1本が加わって、いま76本になっている。

いちばん古いのは2018年2月15日、市役所横の時計についての回答だった。8年半ぶんが消されずに残っている。

年度ごとに数えると、出方はかなりむらがある。

公開された回答の本数(更新日で集計)

  • 平成29年度 1本
  • 平成30年度 2本
  • 令和元年度 27本
  • 令和2年度 11本
  • 令和3年度 3本
  • 令和4年度 10本
  • 令和5年度 7本
  • 令和6年度 5本
  • 令和7年度 9本

令和元年度の27本が突出している。この年に何があったのかは市の資料からは分からなかったが、題名を並べると偏りが見える。ホームページの組織別ページ、ホームページのリンク切れ、重要な会議録の公開、職員名簿の公開、懲戒処分の公表基準、市職員の不祥事に対するお詫び文の公開、人権啓発課の表示。27本のうち7本が、市役所の情報公開と職員の扱いに関するものだった。臥龍山荘の流木、循環バスへの手押し車の持ち込み、公衆電話といった生活の話と、それらが同じ年に混在している。

なお、この集計は各ページに表示された掲載日・更新日を使っている。ページ番号は日付順に並んでいて逆転がないので、表示された日付はおおむね最初に公開された日と見てよさそうだった。

回答はどこまで具体的なのか

思っていたより具体的だった。「検討します」で終わっていない回答が、実際にある。

たとえば2025年12月1日に公開された回答は、生後7か月の子を育てている人からの提言に答えたものだ。体重の増え方がゆるやかなので毎月育児相談で測っているが、もっと気軽に測れる場所がほしい、という内容だった。

市の回答は、まず調べた結果から書き始めている。「市内の授乳室やキッズスペースがある店舗に確認いたしましたが、現在のところ、体重を計測できるスケールを設置している店舗はありませんでした」。そのうえで、こども家庭センター(大洲市総合福祉センター2階)の授乳室内に体重スケールがあること、「職員へ声をかけていただく必要もなく、開館時間内であれば自由に計測いただけます」ことを案内している。

聞かれてから店舗に電話をかけ、その結果を書き、代わりに使える場所を示す。この回答の分量は、意見の3倍近くある。

回答の末尾には「本件に関する問い合わせ先」として、担当課の係名・担当者名・直通の電話番号が載っている。

ただし、これが載るようになったのは最近だ。76本を古い順にたどると、担当課名が入り始めるのは2024年1月5日公開分からで、それ以前の回答には問い合わせ先がない。書式が途中で変わったことになる。

自分の職員への苦情も、謝罪ごと載せている

76本の中で、いちばん驚いたのはこれだった。

市の職員の対応そのものへの苦情が、そのまま載っている。

2026年9月2日に公開された回答がそれだ。窓口の受付時間を過ぎてから届出に来た人が、時間外の受付をしている警備員へ回され、その警備員も手続きを把握していなかった。待っているあいだ、職員の様子が気になった――そういう内容だった。

市の回答は、謝罪から始まっている。「職員の対応についてご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありません」。そのうえで、時間外の受付方法を案内するという手続上は正しい対応だったと説明し、こう続けている。

十分な配慮をした説明や声掛けができなかったものと受け止めております

そして、この意見を職員間で共有し、特に配慮が必要な方への対応を徹底する、と書いた。

自分のところの職員の対応を批判した文章を、要約せずに、謝罪の言葉ごと自分のサイトに載せる。これをする自治体は、そう多くない。先に見た明石市も西宮市も、公開しているのは意見の要旨である。大洲市は本人が書いた文章をそのまま載せている。

76本という数より、この1本のほうが「市民ポストは機能しているのか」への答えに近いと思った。都合の悪い1本を載せられるかどうかが、この仕組みが本物かどうかの分かれ目だからだ。

提言16件に対して、公開された回答は7本だった

ここで数が合わないところがある。

さきほどの2024年12月の総務部長答弁は、件数にも触れていた。「昨年度〔=2023年度〕は、図書館のリサイクル資料提供や市民サービスセンターの営業開始時間についてなど事務事業への提言や施設・設備等への意見など16件、今年度〔=2024年度〕も、現在までに6件の提言をいただいております」。

例に挙がった2件は、どちらも実際にサイトで公開されている回答の題名と一致する。だからこの16件は令和5年度に届いた提言の数だ。

ところが、令和5年度に公開された回答は7本しかない。16件の提言に対して、公開されたのは7本。半分に届かない。

差がどこから来るのかは、市の別の回答が説明していた。市民ポストの中身の共有について答えたページに、「公表しても可となっている意見については、市公式ホームページで誰でも閲覧可能としております」とある。つまり、公開されるかどうかは投函した人が公表を認めたかどうかで決まる。答弁にあった「本人の希望を踏まえた上で回答の要否を判断し」という一文とも合う。

公開されている76本は、届いた提言の全部ではない。投函した人が「出してよい」と言った分だ。

では、意見を出してから回答が返るまでどのくらいかかるのか。これは調べたが分からなかった。公開されている回答ページには、意見を受け付けた日が一切書かれていない。載っているのは市が回答を掲載した日だけだ。しかも市自身が「回答期限について明確な取り決めはありませんが、なるべく迅速に回答できるよう努めております」と書いている。日数を数える手がかりが、公開資料の側にない。

掲載日の並びからは、まとめて出す傾向だけが読み取れた。2024年1月15日に3本、2025年7月25日に3本、2025年5月28日と2024年10月10日にそれぞれ2本が同じ日に公開されている。届いた順に1本ずつ出しているのではなく、ある程度たまってから一度に載せているように見える。

明石市は、1か月で30件を公開している

よその市はどうしているのか。

兵庫県明石市には「市民提案箱」という、名前も仕組みもよく似た制度がある。回答の公開のしかたは、大洲市とはっきり違っていた。

明石市は月ごとに1ページを作り、その月に受け付けた意見と回答をまとめて載せている。令和3年4月から令和8年5月まで、5年ぶんが月単位で並ぶ。さらに分野別のPDFと、全件をまとめたエクセルファイルまで置いてある。

量も違う。令和8年5月の1か月だけで、公開されているのは30件だった。大洲市の8年半ぶんが76本であることを思うと、対比はかなり鮮明だ。明石市の人口は30万7,048人(2026年9月1日現在の推計人口)で、3万7千人台の大洲市のおよそ8倍にあたる。人口差を割り引いても、公開されている件数の密度は明石市のほうが大きい。

ただし、公開している中身は同じではない。明石市のページには「ご意見・ご要望等の要旨と回答を公表しています」と書かれている。要旨、つまり要約だ。対する大洲市は、投函した人が書いた文章をそのまま載せている。ベビースケールの提言も、「八幡浜市には北浜のフジにスケールがあるのでたまに測りに行きますが」という具体的な一文まで残っている。件数では明石市、1件あたりの生々しさでは大洲市、という違い方をしている。

兵庫県西宮市の「市民の声(市長への手紙)」も見た。こちらは公開の条件を明文で並べているのが特徴だ。ホームページの投稿フォームから届いたもので、市の考え方を広く共有する必要があると担当部署が判断したもので、提出者が公開を承諾していることが確認できるもの。この3つすべてに当てはまるものだけを公開する、としている。回答の期限も「原則10開庁日以内」と数字で決まっている。要約して公開することがある、とも明記されている。

大洲市には、この種の公開基準を明文で並べたページは見つけられなかった。基準に近いものは、市民ポストへの提言に対する回答の中に断片的に書かれているだけだった。

パブリックコメントとは、別の入口だった

大洲市で市民が意見を出せる公式の入口は、市民ポストだけではない。パブリックコメントがある。

ただ、この2つは性格がまるで違った。

第3次大洲市総合計画の基本構想(案)へのパブリックコメントに意見を出したのは5人、意見の件数は21件で、計画に反映されたのは1件だった。パブコメは募集期間が決まっていて、対象が計画や条例に限られ、しかも案がほぼ固まった段階で意見を求められる。

市民ポストのほうは、いつでも出せて、テーマの制限がない。体重計の話でも、市役所横の時計の話でも、公民館の駐車場の白線の話でも受け付けられている。

2013年12月定例会の答弁でも、市はこの2つと行政相談を並べて「今あるパブリックコメント制度や市民ポスト、行政相談なども有効に活用しながら、市政への民意の反映に努めてまいりたい」と述べていた。3つで役割を分けている、という整理だ。行政相談は市ではなく国の制度で、地域に委嘱された無報酬の行政相談委員が窓口になる。大洲市にも委員がいて、長く務めた委員が総務大臣表彰を受けたこともある。

なお、市民ポストがいつ始まった制度なのかは特定できなかった。会議録は2008年分から全文が残っているが、設置を決めた場面は見つからない。2009年3月定例会の答弁に、循環バス「ぐるりんおおず」への感想が届いた経路として市民ポストがすでに出てくるので、遅くとも2009年には動いていたことだけは確かだ。

数えてみて分かったこと

この種の意見箱は形だけのものだろう、と思いながら数え始めた。

そうではなかった。8年半ぶんが消されずに並んでいて、意見も回答も要約されずに全文で載っている。店舗に電話をかけた結果まで書いてある回答がある。投函した紙が市長まで回るという手順も、議会の場と市のページの両方に言葉として残っている。

同時に、公開されているものが全部ではないことも、はっきり分かった。令和5年度の提言16件に対して、読めるのは7本。残りは投函した人が公表を認めなかったか、回答自体を望まなかったものだ。公開されている76本は、そもそも「見せてよい」と本人が言った分だけを集めた棚である。そう思って読むと、見え方が少し変わる。

もうひとつ、追いかけていて気づいたことがある。「ホームページからの投稿の受け入れについて、ご検討いただきますようお願いします」。この種の提言が、繰り返し届いている。2024年10月の回答では「制度の見直しについて検討しているところです」、2025年5月では「今後検討してまいります」、2025年7月では「今後の運用改善の参考とさせていただきます」と市は答えていた。2026年6月時点の一覧を見た限りでは、新しい募集方法のお知らせは見当たらなかった。いまのところ、意見を出すには紙に書いて箱に入れる必要がある。

調べる前に知りたかったのは、出した意見が返ってくるのかどうかだった。分かったのは、返ってくるらしい、ということ。そして自分より前に誰かが同じことを書いていないかは、いま市のサイトで確かめられる、ということだ。

出典・参考にした資料

市民ポスト(回答一覧)/大洲市(2026年6月6日時点の保存版で回答75本を数え、2026年9月2日公開の1本を加えて76本とした) 市民ポストへの提言(市民ポストについて)への回答/大洲市(更新:2025年5月28日。設置場所、回答期限の取り決めがないこと、ホームページでは受け付けていないことを取った) 市民ポストへの提言(市民ポストの内容共有について)への回答/大洲市(更新:2025年7月25日。企画情報課が収受し市長まで回覧すること、市議には共有しないこと、公表可の意見だけを公開することを取った) 市民ポストへの提言(市民ポストの設置について)への回答/大洲市(更新:2025年7月25日。本庁・支所と21のコミュニティセンターという設置場所を取った) 市民ポストへの提言(スケール設置について)への回答/大洲市(更新:2025年12月1日。回答の具体例と、担当課・担当者名の表示形式を取った) 市民ポストへの提言(市の職員の対応について)への回答/大洲市(更新: 2026年9月2日。謝罪から始まる回答の文面と、意見を職員間で共有し配慮を必要とする方への対応を徹底するという記述を取った) 令和6年12月定例会 会議録(2日目)/大洲市議会(2024年12月開催。総務部長答弁から受理から公開までの手順と、令和5年度16件・令和6年度6件という提言件数を取った) 意見と回答/明石市(更新:2026年7月31日。市民提案箱の公表方針と、月別一覧・全件エクセルという公開の形を取った) 令和8年5月 意見の要旨と回答/明石市(2026年5月分。1か月で30件が公開されていることを数えた) 市民の声(市長への手紙)及び各種通報・お問合せ/西宮市(更新:2026年8月5日。公開対象の条件と「原則10開庁日以内」という回答期限を取った) 第3次大洲市総合計画基本構想(案)に対するパブリックコメントの実施結果/大洲市(更新:2026年7月29日。意見提出者5人・21件・反映1件という数字を取った) 推計人口/明石市(2026年9月1日現在。明石市の人口30万7,048人を取った) 住民基本台帳による人口・世帯数/大洲市(令和8年7月末。大洲市の人口3万7千人台という比較の土台に使った)

この記事をサイトに掲載した日: 2026/09/05