2026/08/09 ・ 大洲と読書
「仕事と読書は両立できないのか」という、シンプルだけどずっと引っかかっていた問いから始まる新書です。
明治の「立身出世」の時代から、大正の教養主義、戦後のサラリーマン向け雑誌、1990年代の自己啓発ブーム、そしてスマホで「情報」だけを追う今の時代まで。
働き方と読書の関係が、ずっと形を変えながら続いてきたことが、歴史をたどる形で説明されていきます。
結論はシンプルで、「全身全霊」で働く生き方をやめて、「半身」で働く生き方に変えていこう、というものでした。
最後のページを読み終えたとき、「(今)半身で生きていこうや」と、思わず本の余白に書き込んでしまったくらい、強く共感しました。
資格の勉強をしながら日々の仕事もこなしていると、正直「趣味や教養に割ける時間なんてない」と感じる瞬間がよくあります。
この本は、その悩みが自分だけのものではなく、時代がつくってきた構造そのものだと教えてくれました。
だから「頑張れていない」自分を責めなくていい。そう思わせてくれる本でした。
あの2人がどのくらい珍しいのか。数えられる資料がありました。
令和8年度の図書館要覧によると、令和7年度に市内4館で貸し出された本は12万5,274冊。年齢層別の内訳はこうです。一般(19歳〜)9万9,401冊、児童(0〜12歳)2万1,127冊、そして学生(13〜18歳)は4,746冊。全体の3.8%でした(自分で割りました)。
利用者カードを持っている学生は、累計で1,429人います。全登録者2万617人の6.9%です。その学生が令和7年度に借りに来た延べ回数は1,623回でした。カードを作った学生1人あたり、年1.1回です。
前の年と並べると、もうひとつ見えるものがあります。令和6年度の学生の貸出は4,747冊でした。1年で1冊しか減っていません。同じ期間に児童は886冊、一般は2,729冊減っています。中高生の貸出だけが、もう減りようのないところで止まっている、という形です。
カフェで本を開いていた2人組は、この4,746冊の側にいました。
小中学生については、市が2つのものさしを持っています。向きが違いました。
ひとつは不読率です。令和7年12月の決算特別委員会で、市はこう答えています。今年6月の調査で不読率は小学生0.9%、中学生4.9%、就学前児6.3%で、いずれも前年より改善した、と。学校での朝読や市立図書館の事業が理由に挙げられていました。1か月に1冊も読まない子は、ほとんどいません。
もうひとつは、全国学力・学習状況調査の質問紙です。令和6年3月の市議会で、教育委員会はこう答えています。
例年読書習慣に関する項目が全国平均より低い状態であることを教育委員会としても危惧しております。自分専用のスマートフォン等を所持している児童生徒が多く、家庭においてゲームや動画視聴等に費やす時間が増えていることが原因とも言えますが、全国平均を下回っていることが心配です
大洲市議会 令和6年3月定例会 会議録 西山慎介学校教育指導監
質問した議員は、平日30分以上読書をする割合が全国平均以下である、と具体的に述べていました。
ゼロの子は減った。けれど、まとまった時間を本に使う子は増えていない。この本が「情報」に時間を奪われる構造として書いたことが、大洲の小中学生については、市の側の言葉でそのまま説明されていました。
同じ答弁には、令和5年度の全国学力・学習状況調査で、文章を読み取ったり複数の資料から必要な情報を得たりする応用力の設問の正答率が低い、ともあります。いっぽうで「自分で計画を立てて勉強している」「将来の夢や目標を持っている」は全国平均より高く、教育委員会は大洲の子どもたちを「真面目であり、意欲も高い」と分析していました。
なお、高校生の不読率は市の資料にありませんでした。 調査の対象は小学生・中学生・就学前児です。あの2人が大洲の高校生の中でどのくらい珍しいのかは、公開されている資料からは確かめられませんでした。
「半身」で本と付き合おうとするときに、いちばん先に効いてくる数字があります。開館時間です。
大洲市立図書館の開館時間は午前9時30分から午後6時まで。休館日は毎週月曜日です。フルタイムで働いて、帰りに寄る。この使い方は平日にはほとんどできません。
市もここを考えたことがあります。平成22年、9月から11月までの木曜日だけ開館を1時間ずらし、午前10時30分から午後7時までにする試行が行われました。夕方の利用者数のデータを取り、今後の検討の基礎資料にするという説明でした。平成27年の第3期集中改革プランにも「市立図書館の開館時間延長の検討」が入っています。
それから16年たった今の公式ページを見ると、開館時間は9時30分から18時のままです。
「全身全霊」をやめて「半身」で読もう、とこの本は言います。大洲でそれをやろうとすると、閉まる時刻のほうが先に来ます。だからこそ、あのカフェの2人が持っていた時間は、思っていたより貴重なものだったのだと思います。
この本を読んでいたころ、大洲の隣町のカフェで、女子高生2人組が向かい合って本を読んでいるのを見かけました。
参考書だけでなく、ChatGPTらしきものも気にしていた様子だったのを覚えています。
「本が読めなくなる」のは大人だけの話だと思っていましたが、高校生にとっても、部活・勉強・スマホに時間を取られる中で「本を読む時間」を自分で確保するのは、簡単なことではないはずです。
それでもカフェで本を開いていた2人の姿は、忙しさの中でも「半身」で本と付き合う時間を、すでに自分の生活に組み込んでいるように見えました。
大洲市内には大洲市立図書館があり、本館のほか長浜・肱川・河辺に分館があります。
「全身全霊」で頑張りすぎず、隙間時間に本を開く。そんな「半身」の読書を後押ししてくれる場所が、すでに大洲にはあるのだと、この本のおかげで改めて気づかされました。