大洲のいま ・ 出典: 大洲市「令和5年度大洲市ふるさと納税報告書」 ・ 約7分で読める
ふるさと納税って、寄付する人が使い道を選べるんだ。
大洲でいちばん選ばれたのは、肱川の自然を守ることだったよ。
3行でいうと調べた資料 5本
大洲市の令和5年度ふるさと納税実績は、13,974件・3億4,355万4,600円だった。
この記事は、その年度の報告書を1冊読み通したメモである。最新の令和7年度実績(4億6,079万円)や、集めたお金の経費率については、大洲市のふるさと納税4.6億円。そのうち2.2億円は経費で消えていたのほうで詳しく書いた。
ここでは、寄附がどの事業にいくら入ったのかという細部を追う。
大洲市のふるさと納税は、寄附するときに使い道を9つから選べる。令和5年度の内訳はこうだった。
| 使い道 | 件数 | 寄附額 |
|---|---|---|
| 肱川をはじめとする自然環境との共生 | 4,492件 | 1億1,047万3,100円 |
| 子どもの未来に関する事業 | 4,429件 | 1億991万8,000円 |
| 市長におまかせ | 3,013件 | 7,415万7,000円 |
| 健康・安心の福祉に関する事業 | 845件 | 2,076万2,200円 |
| 地域コミュニティと市内産業の活力創造 | 431件 | 1,106万円 |
| 文化の保全継承、活用創造 | 425件 | 963万1,000円 |
| デジタルも活用したふるさとづくり | 220件 | 517万200円 |
| 大洲市民文化会館建設 | 72件 | 172万円 |
| ガバメントクラウドファンディング | 47件 | 66万3,100円 |
件数でも金額でもトップは「肱川をはじめとする自然環境との共生」だった。
肱川という名前が入った選択肢が一番選ばれている、というのは大洲市らしい結果だと思う。
ただしこの順位は、翌令和6年度には入れ替わっている。令和6年度は「子どもの未来に関する事業」が5,471件・1億4,917万236円でトップになり、「自然環境との共生」は3,858件・1億1,803万700円で2位に下がった。
件数で見ると、自然環境は4,492件から3,858件へ634件減り、子どもの未来は4,429件から5,471件へ1,042件増えている。1年で寄附者の選択が動いていることになる。
ここは制度の仕組みとして押さえておきたいところだ。
寄附金は、原則としていったん「地域振興基金」に積み立てられる。
その年に集めたお金がその年に使われるわけではない。令和5年度に実際の事業へ充てられたのは、令和4年度までに積み立てた基金残高のうち2億7,607万円だった。
同じように、令和5年度に集めた3億4,355万円は、令和6年度以降の事業の財源になる。
実際、令和6年度には3億3,460万円が基金から取り崩されて事業に充てられた。
1年遅れで、集めた分とほぼ同じ額が出ていく循環になっている。
令和5年度の充当先で、金額が一番大きかったのが「肱川をはじめとする自然環境との共生に関する事業」の8,170万3,000円だ。名前だけ見ると自然保護の話に見えるが、中身は違った。
この枠に入っていた最大の事業が肱川地区複合公共施設整備事業である。
平成30年7月豪雨で被災した肱川支所・肱川公民館・図書館肱川分館・肱川保健センターを1つの建物にまとめる事業で、施設自体は令和5年7月から供用が始まっている。
令和5年度に行われたのは、被災した旧支所の解体と、バス発着場・緊急避難場所を兼ねる駐車場の整備だった。
同じ枠には、うかい観光活性化事業や父橋の改修事業も含まれている。
「肱川」という言葉で集めたお金が、豪雨で壊れた肱川地区の公共施設の再建に回っていたという構図で、寄附した人の意図と使い道は、少なくともこの事業についてはきれいにつながっている。
2番目に大きいのが「子どもの未来に関する事業」の8,590万3,000円。
スクールバスの管理運行費、小中学校への電子黒板や楽器などの備品購入、自然教室の推進に使われた。
翌令和6年度の同じ枠(1億2,505万4,000円)では、スクールバス、認定こども園の給食材料費、学校給食センターの委託料が挙がっている。
学校給食センターは市内の公立小中学校・幼稚園・認定こども園の計25施設に給食を提供しており、その運営費の一部がふるさと納税で賄われている。
「文化の保全継承」には796万6,000円。臥龍山荘の庭園整備などに充てられた。
臥龍山荘は、臥龍院・不老庵・文庫の3棟が2016年に国の重要文化財、庭が2021年に国の名勝に指定されている。
令和5年度の使い道で件数が2番目に少なかったのが「大洲市民文化会館建設に関する事業」の72件・172万円だ。
これは支出ではなく、積み立てである。昭和43年に整備された大洲市民会館の老朽化に伴い、新しい文化施設を建てる計画で、寄附は令和11年の開館まで地域振興基金に積み立てられる。
令和6年度の報告書時点で、この目的の積立額は319万8,500円になっていた。
建設そのものは、ふるさと納税とは桁が違う規模で動いている。令和8年度6月補正予算に市民文化会館建設事業2,539万2,160千円(25億3,921万6千円)が計上され、令和8年度から10年度までの継続費として総額64億100万円が設定された。現市民会館は建設から58年が経っている。
64億円の事業に対して、寄附による積立は320万円。割合にすると0.05%だ。
寄附で建つわけではない。それでも、使い道の選択肢としてわざわざ立てられていることに意味があるのだと思う。
令和5年度の報告書で一番印象に残ったのが、ガバメントクラウドファンディングの結果だった。
テーマは「飼い主のいない猫を増やさないまちづくり」。猫の不妊去勢手術の補助を厚くするため、目標100万円で寄附を募った。結果は47件・66万3,100円で、目標には届かなかった。
それでも市は、この未達をそのまま報告書に載せている。そして集まった分は、令和6年度に241匹の手術に使ったと具体的な数字で書いた。
翌令和6年度も同じテーマで再挑戦している。募集期間は令和6年7月18日から10月15日。
結果は47件・119万3,000円で、今度は目標の100万円を超えた。
件数はまったく同じ47件なのに、金額が1.8倍になっている。
1件あたりの寄附額が、1万4,109円から2万5,383円へ上がった計算になる。
あとから振り返ると、令和5年度は伸びの途中にあたる年だった。総務省の時系列データで大洲市の推移を追うとこうなる。
令和3年度の3億3,172万円から令和4年度は2億7,362万円へいったん落ち、令和5年度に3億4,355万円で持ち直している。右肩上がり一辺倒ではなく、上下しながら伸びている。
ひとつ正直に書いておくと、令和6年度の数字は市の報告書と総務省の集計が一致しない。
市の報告書は4億4,143万536円、総務省の集計は4億4,339万6,785円で、約197万円の差がある。
総務省の調査が「決算見込」で報告される数字であることや、集計の締めのタイミングが違うことが理由とみられるが、どちらが正しいという性質のものではないので、そのまま両方を書いておく。
件数と金額そのものより、「何に使われたか」の具体性のほうが印象に残った。
豪雨で壊れた支所の解体と駐車場の整備。学校給食センターの委託料。
臥龍山荘の庭の手入れ。241匹の猫の手術。どれも、それ自体では寄附を集める看板になりにくい、地味な出費だ。
ふるさと納税は返礼品ばかりが話題になるし、実際にその側面が大きい制度でもある。
ただ、集まった先で何が起きているかまで一次資料で追うと、印象がかなり変わった。
目標に届かなかった年をそのまま載せる報告書の作り方も含めて、読んで損はない資料だと思う。