大洲市のふるさと納税4.6億円。そのうち2.2億円は経費で消えていた

大洲市役所の庁舎入口と「大洲市庁」の銘板
大洲市役所の庁舎入口と「大洲市庁」の銘板(撮影: OZU LIFE MEMO)
メモう

大洲のふるさと納税、去年は過去最高だったんだ。

でも集まったお金の半分近くは、お礼の品や手数料で消えてるの。

これ、国のルールぎりぎりの線なんだって。メモう!

3行でいうと調べた資料 8本

  • 令和7年度のふるさと納税は過去最高の4億6,079万円
  • そのうち2億2,804万円(49.49%)は返礼品や手数料などの経費で消える
  • 経費5割以下は国のルール。県内の多くの自治体が上限ギリギリで制度を回している

大洲市のふるさと納税の最新実績は、17,770件・4億6,079万3,300円だ。

令和7年度の数字である。過去最高だ。

ただし、この数字は市のホームページには載っていない。市の「寄附及び活用状況」ページに出ているのは令和6年度分(15,464件・4億4,143万536円)までで、令和7年度の実績はまだ更新されていない。

では、どこで分かるのか。総務省が毎年7月末に公表する「ふるさと納税に関する現況調査」だ。

全国の自治体が決算見込を報告したものが、団体ごとにExcelで公開されている。

令和8年7月31日公表分に、大洲市の令和7年度実績が入っていた。

4億6,079万円のうち、市の手元に残るのはいくらか

この現況調査がありがたいのは、受入額だけでなく、募集にかかった費用まで内訳で報告されているところだ。大洲市の令和7年度はこうなっていた。

費目金額受入額に占める割合
返礼品等の調達に係る費用1億1,693万1,130円25.4%
事務に係る費用8,592万3,655円18.6%
返礼品等の送付に係る費用2,078万7,300円4.5%
決済等に係る費用356万3,740円0.8%
広報に係る費用83万6,909円0.2%
合計2億2,804万2,734円49.49%

集めた4億6,079万円のうち、2億2,804万円が経費だった。ほぼ半分である。

差し引いて手元に残るのは2億3,275万566円。ここが実際に事業に使えるお金になる。

なぜ「ほぼ半分」で止まっているのかというと、そういうルールだからだ。

ふるさと納税の指定制度では、募集に要する費用の総額を受入額の5割以下に抑えることが、総務大臣の指定を受ける条件のひとつになっている。大洲市の49.49%は、その天井のすぐ手前にある。

愛媛県内を見ると、この「5割ギリギリ」は大洲市だけの話ではない。

松山市49.99%、内子町49.99%、上島町49.89%、西予市49.40%、鬼北町49.93%。

多くの自治体が、上限まで使い切る前提で制度を回している。例外は松野町の36.97%くらいだ。

もうひとつ目についたのが、事務費8,592万円という金額。返礼品の調達費に次いで2番目に大きい。

ポータルサイトへの手数料や委託料が中心とみられ、令和8年度当初予算でも「ふるさと納税関係経費」として3億5,060万円が計上されている(手数料7,855万2千円、特産品代1億7,510万円、通信運搬費4,206万円、委託料5,488万8千円)。

寄附を集めるために、市は毎年3億円台の予算を先に組んでいる。

何に使われたのか。9つの使い道と充当額

使い道の内訳は、市の報告書に細かく出ている。令和6年度分はこうだった。

使い道件数寄附額
子どもの未来に関する事業5,471件1億4,917万236円
肱川をはじめとする自然環境との共生3,858件1億1,803万700円
市長におまかせ3,855件1億255万9,600円
健康・安心の福祉に関する事業878件2,506万1,000円
地域コミュニティと市内産業の活力創造514件1,919万7,000円
文化の保全継承、活用創造521件1,756万5,000円
デジタルも活用したふるさとづくり234件611万8,000円
大洲市民文化会館建設91件253万6,000円
ガバメントクラウドファンディング47件119万3,000円

1件の寄附で複数の使い道を選べるため、使い道の合計件数(15,469件)は寄附件数(15,464件)よりわずかに多い。

集まったお金は原則として「地域振興基金」にいったん積み立てられ、翌年度以降の事業に充てられる。

令和6年度は、令和5年度までに積み立てた残高から3億3,460万円が実際の事業に投入された。

内訳は子どもの未来に1億2,505万4千円、自然環境との共生に1億930万8千円、地域コミュニティに5,399万7千円、文化の保全に2,107万8千円、健康・福祉に2,028万6千円、デジタルに487万7千円。足すとちょうど3億3,460万円になる。

具体的な事業名まで書いてあるのがこの報告書のいいところで、スクールバスの運行費、学校給食センターの委託料、臥龍山荘の庭園整備、うかいの船頭を養成する研修、デマンド交通、スマート農業のドローン補助といったものが並ぶ。

ふるさと納税は、市の日常業務のかなり広い範囲を実際に支えている。

ひとつ制度上の変更があった。報告書には「令和6年度からは、ふるさと納税に係る経費を差し引いた額を積み立てています」という注記がある。

それまでは寄附額の全額を基金に入れていたわけで、令和6年度から基金の見え方が変わっている。過去の基金残高と単純に比べられない点は、注意しておきたい。

大洲市は「もらう側」であると同時に「取られる側」でもある

ここまでは入ってくる話だ。出ていく話もある。

大洲市に住んでいる人が、他の自治体にふるさと納税をすれば、その分だけ大洲市の市民税が減る。総務省の同じ調査には、この控除額も自治体別に載っている。

令和8年度課税分で、大洲市民1,396人が、よその自治体に合計1億299万2,300円を寄附していた。

その結果、大洲市の市民税が4,780万9,146円、愛媛県の県民税が3,187万2,764円、それぞれ減っている。

ただし、減った分をまるごと損するわけではない。減収額の75%は地方交付税で補填される仕組みになっている。

地方交付税の計算では、市の標準的な税収の75%が「基準財政収入額」として算入されるため、税収が減れば、その75%分だけ交付税が増える理屈だ。

そこまで含めて、令和7年度の収支をざっと計算するとこうなる。

  • 受入額 4億6,079万3,300円
  • 募集に要した費用 -2億2,804万2,734円
  • 市民の寄附による市民税の減収 -4,780万9,146円
  • そのうち地方交付税で戻る分(75%) +3,585万6,860円
  • 差引 約2億2,080万円のプラス

年度がぴったり揃っていない(控除額は令和8年度課税分)ので概算だが、桁は動かない。

大洲市はふるさと納税で、毎年2億円強を純増させている。一般会計の当初予算278億8千万円と比べれば1%に満たないが、市が自由に使える一般財源としては小さくない額だ。

八幡浜市は10倍集めている。何が違うのか

愛媛県内で並べてみると、大洲市の位置がよく分かる。令和7年度の受入額はこうだ。

愛媛県内の市町別ふるさと納税受入額(令和7年度)
八幡浜市
47.8億円
今治市
36.2億円
松山市
26.6億円
愛南町
26.0億円
西予市
6.7億円
大洲市
4.6億円
出典: 総務省「各自治体の令和7年度受入額等」。県内20市町のうち大洲市は9位

八幡浜市は47億7,766万円。大洲市の10.4倍である。人口はむしろ八幡浜市のほうが少ない。

件数でも34万3,381件対1万7,770件で、約19倍の差がついている。

八幡浜市がいつ抜け出したのかを、総務省の時系列データで追ってみた。

平成26年度まではどちらも1,000万円前後の横並びだった。

差がついたのは平成27年度で、八幡浜市が3億4,864万円まで一気に伸びたのに対し、大洲市は451万円のままだった。

八幡浜市はここでみかんと水産物という主力返礼品を揃え、その後は令和2年度11億5,065万円、令和5年度23億513万円、令和7年度47億7,766万円と、10年以上ずっと右肩上がりで積み上げている。

大洲市が本格的に動いたのは平成28年度(3,642万円)からで、八幡浜市より1年遅れている。

この1年が10年で10倍の差になった、と言い切るだけの材料はないが、少なくともスタートの早さと、その後の継続投資の差ははっきり数字に出ている。

なお、大洲市の推移にも読みどころがある。平成30年度に1億3,037万円・5,911件と前年(2,918万円・817件)から7倍に跳ね上がり、翌令和元年度には7,121万円・2,659件へ半減している。

平成30年7月豪雨があった年度に急増し、翌年度に落ちている。

災害への支援寄附がこの山を作った可能性が高いが、市の報告書に「災害分がいくら」という内訳はなかったので、断定はしない。

隣の西予市は、この差を自分の財政問題として書いている。令和7年10月に策定した「西予市財政危機脱却プラン2025」には、改革のポイントとして「ふるさと納税は億単位の増収が期待できる有力な手段」と明記され、わざわざ「令和6年ふるさと納税 西予市5億円、八幡浜市31億円、愛南町27億円」という比較が添えられている。

ふるさと納税の巧拙が、自治体の財政力の差として意識される段階に入っている。

ここまでが、集めたお金の半分が経費で消えるという話。
ここからは、そのルールが変わるという話。大洲の数字は届かなくなるの。

令和8年、ルールが変わった。大洲市の49.49%は届かなくなる

ここが一番大きな話かもしれない。令和8年度の地方税制改正で、ふるさと納税の指定基準が変更された。

総務省の資料によると、変更点は3つある。

  • 寄附金活用可能額の割合を60%以上と設定し、使途を公表すること。ただし令和8年の指定から段階的に適用され、令和8年52.5%、令和9年55%、令和10年57.5%、令和11年60%と引き上げられる
  • 特例控除額に193万円(給与収入1億円相当)の上限を新設する(令和9年寄附分から)
  • 指定の取消期間を3年以内(現行2年)に延ばし、最大5年前の違反事案まで取消対象にする

「寄附金活用可能額」とは、令和8年3月31日の総務省告示第145号で新設された考え方で、受け入れた寄附金から募集に要した費用を引いた残りを指す。

これが受入額の一定割合以上でなければならない、という縛りだ。

裏返すと経費率の上限が、これまでの50%から段階的に40%まで下げられるということになる。

大洲市の令和7年度実績に、この物差しを当ててみる。活用可能額は2億3,275万566円で、受入額に対する割合は50.51%

令和8年に適用される52.5%という最初のハードルに、すでに2ポイント足りない。令和11年の60%となると、10ポイント近い開きがある。

実際の指定の判定は、前年度の実績と当該年度の見込みを市が申し出て総務大臣が行うため、この計算がそのまま結論になるわけではない。

それでも、返礼品の調達費(25.4%)と事務費(18.6%)のどちらかを削らないと数字が合わないという構図は変わらない。

返礼品を薄くすれば寄附が減り、事務費を削れば手が回らなくなる。市はここから数年、この二択を迫られることになる。

令和8年度当初予算では、ポータルサイトを「ふるなび」「JAL」「楽天」などに加えて「さとふる」「現地決済型:ゲンチ」「一休.com」まで広げ、寄附の拡大を目指すとしている。

分母である受入額を増やして経費率を下げにいく、という方向だ。

うまくいくかどうかは、令和9年7月の現況調査で答え合わせができる。

目標100万円に届かなかった、猫のクラウドファンディング

最後に、金額としては小さいが印象に残った話をひとつ。

大洲市はガバメントクラウドファンディングという仕組みで、使い道を1つに絞った寄附も募っている。

テーマは「飼い主のいない猫を増やさないまちづくり」。猫の不妊去勢手術の補助金を厚くするためのものだ。

令和5年度は目標100万円に対して47件・66万3,100円で未達に終わった。

それでも市はこの結果をそのまま報告書に載せ、集まった分は令和6年度に241匹の手術に使ったと書いている。

翌令和6年度は、募集期間を7月18日から10月15日に設定して再挑戦し、同じ47件で119万3,000円

今度は目標の100万円を超えた。件数は変わらないのに金額が1.8倍になっているので、1件あたりの寄附額が上がったことになる。

未達だった年の結果を隠さずに載せ、翌年また挑戦して超える。4億6,079万円という総額よりも、この119万3,000円のほうが、寄附の使われ方としては分かりやすい。

なお、令和5年度の実績を詳しく見た記事は大洲市ふるさと納税、令和5年度実績は13,974件・3億4355万円のほうに書いている。

ふるさと納税を「返礼品でお得に買い物する制度」としてしか見ていなかったが、使い道を選ぶという建前が、少なくともこの部分では実際に機能していた。