大洲の視点 ・ 出典: 大洲市役所、愛媛新聞 ・ 約9分で読める
大洲の公民館、いっせいに名前が変わったの知ってた?
生涯学習だけじゃなく、地域づくりにも使えるようにするためなんだって。
全国で同じ流れが進んでるよ。
3行でいうと調べた資料 5本
「大洲市公民館」という言葉を、最近あまり聞かなくなった気がする。 気づけば「コミュニティセンター」という名前に変わっていた。
いつの間に、どうして変わったのか。 気になったので調べてみた。
大洲市の公式ページを見ると、はっきり書かれていた。 「地域の新たな活動拠点施設として『公民館』が『コミュニティセンター』に生まれ変わり」、 「令和6年4月1日から市内全域でスタート」したという。
つまり2024年4月1日、市内すべての公民館が、いっせいに看板を掛け替えたということになる。
以前このサイトで取り上げた上須戒コミュニティセンターも、この流れの中にある施設のひとつだった。
ただし、上須戒のように建物ごと新築する場合は話が別のようだ。
名称の切り替えは2024年4月でも、実際の完成・供用開始は、施設によって数年後になることもあるらしい。
一番気になっていたのがここ。 大洲市の説明によると、理由は「利用範囲の拡大」にあるようだ。
これまでの公民館は、社会教育法という法律に基づいて運営されていた。
社会教育法は「生涯学習」を目的とした施設で、実施できる活動にいろいろ制限があったらしい。
コミュニティセンターになると、この制限が緩和される。「生涯学習」に加えて、「地域づくり」や「人づくり」の活動など、多用途に使えるようになるという。
住民ニーズに応じた学びの事業を、地域自身で企画・運営することも可能になったそうだ。
実はこれ、大洲市だけの動きではないらしい。 検索してみると、全国のいろんな自治体で、同じように「公民館のコミュニティセンター化」が進められていた。
背景にあるのは、地域コミュニティの担い手不足や、住民ニーズの多様化のようだ。
公民館の管理基準を緩和し、地域づくりの拠点として使いやすくする狙いがあると説明している自治体が多い。
将来的には、各地域に「まちづくり協議会」のような組織ができて、コミュニティセンターの指定管理を担っていく、という方向性を掲げている自治体もあるようだ。
大洲市がどこまでこの将来像を描いているかは分からないが、方向性としては近いものを感じた。
大洲市コミュニティセンター条例も、実際に読んでみた。 設置目的は「市と自治会との協働による取組その他自主的なまちづくりを進め、 人々が支え合い、心豊かに暮らすことができる住み良い地域社会の実現を図るため」とある。
「まちづくり」という言葉が、条文にはっきり入っているのが印象的だった。
運営の仕組みは指定管理者制度で、市長が指定した団体が実際の管理運営を担う形になっている。
利用を許可しない基準として、「公の秩序又は善良な風俗を乱すおそれ」や「建物又は附属設備を汚損し、又は破損するおそれ」といった項目も定められていた。
このあたりは、以前の公民館条例とそう変わらない内容という印象を受けた。
そして附則には、「大洲市公民館条例(平成17年大洲市条例第111号)は、廃止する」とはっきり書かれている。
古い条例を廃止し、新しい条例に切り替える形で、この移行が行われたということになる。
2023年11月、愛媛新聞がこの動きを報じていたことも分かった。
ただし記事本文は会員限定で、確認できたのは「12月定例議会に提出する一般会計補正予算」に関する冒頭部分だけだった。
それでも、2023年11月時点ですでに市議会にこの件が諮られる段階にあったことは分かる。
2024年4月の全面移行に向けて、前年の秋から準備が進められていたのだろう。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2023年11月 | 愛媛新聞が報道。12月定例議会に提出する補正予算として市議会に諮られる段階に |
| 2023年12月 | 大洲市議会12月定例会 |
| 2024年4月1日 | 市内全域でコミュニティセンターへ一斉に移行。大洲市公民館条例(平成17年条例第111号)は廃止 |
名称の切り替えは全市いっせいだが、建物の建て替えを伴う施設では、実際の完成・供用開始が数年後になることもある
今回調べてみて感じたのは、「名前が変わった」というだけの話ではなさそうだ、ということ。
社会教育法という法律の枠から、まちづくり条例の枠へ。施設の位置づけそのものが変わっているように見える。
公民館という言葉には、なんとなく「昔からある施設」というイメージがあった。
コミュニティセンターという名前になって、地域住民が自分たちで使い方を決めやすくなったのだとしたら、それは前向きな変化だと思う。
一方で、名前が変わっただけで中身が伴わなければ意味がない、という声もあるかもしれない。
上須戒のように新しい建物と一緒に生まれ変わった施設もあれば、名前だけ変わって建物はそのまま、という施設もあるはずだ。
それぞれの地域で、実際どう使われているのか。 機会があれば、もう少し詳しく見ていきたい。
この記事は「いつの間に変わったのか」という書き出しで始めた。 市議会の会議録を読んだら、その前提が間違っていた。
令和5年3月の定例会で、市の総合政策部長が経緯をまとめて答弁している。 それを表にすると、こうなる。
| 時期 | 何があったか |
|---|---|
| 平成17年(2005) | 市町村合併。新市建設計画に地域の自立が重点プロジェクトとして入る |
| 平成19年度 | 市内全域で自治会制度を新設 |
| 平成27年(2015) | 大洲市地域自治推進条例を制定 |
| 平成27年度 | 自治会と区長会の統合・再編。あわせて公民館との統合も検討したが、取りまとめには至らず |
| 令和2年度 | 各地区を訪問して関係者から聞き取り |
| 令和3年7月 | 大洲市地域自治組織再編検討会議を設置 |
| 令和5年2月24日 | 第9回の検討会議で再編の原案を承認 |
| 令和6年4月1日 | 市内全域でコミュニティセンターへ移行 |
合併から数えて19年。しかも平成27年度に一度、まとまらずに終わっている。 部長の言葉では「将来的に一元化を目指すということで取りまとめには至らず、 引き続き検討することとなっておりました」。
検討会議のほうも、1年7か月にわたって、計9回開かれている。 部長は答弁をこう締めていた。 「合併後20年近くが経過しようとしている今、 ようやく現在の方針の原案の取りまとめができつつあるものと考えております」。
看板が掛け替わった日は1日だったが、そこに至る道は19年あった。 「いつの間に」と感じたのは、たぶん最後の1日しか見ていなかったからだ。
理由も同じ答弁に書かれていた。記事の中ほどで「利用範囲の拡大」と書いたが、 市が挙げていた本当の理由は、もう少し身も蓋もないものだった。
自治会と公民館は、人づくり、地域づくりなど、共通の目的・目標を持つ組織であり(中略)高齢化や人口減少をはじめ、役員の成り手不足、参加者の減少、固定化など、同じような課題を抱えているのが現状でございます
大洲市議会 令和5年3月定例会(2日目)会議録 久保明敬総合政策部長
2つの組織が、同じ人手不足に困っていた。 だから1つにする、という話である。 「限られた人員・財源で、効果的な事業を展開していく」ためだ、とも述べられている。
移行にあたって、市は 「各コミュニティセンターにおいて直接業務を行う職員を増員する」とも答えていた。 名前を変えるだけでなく、人を置く、という話だったことになる。
そして、この記事でいちばん知らなかったのがこれである。 コミュニティセンターは、令和6年4月がゴールではなかった。
令和5年12月の定例会で、市がこう答えている。
コミュニティセンター移行4年目の令和9年度を目標に指定管理者制度を導入する方向としております
大洲市議会 令和5年12月定例会(2日目)会議録
令和9年度から、地域が管理者になる。 いまは市の職員(会計年度任用職員)がセンター長を務めているが、 指定管理になれば、その立場が変わる。
議会では、そこを心配する質問が出ていた。 センター長は個人情報や市の交付金を扱うのに、 指定管理になると地方公務員法の服務規程が適用されなくなるのではないか、 問題が起きたとき誰が責任を負い賠償するのか、という趣旨である。
市の答えは、はっきりしていた。 個人情報や交付金、各種会費、基金といった自治会の財産は 「指定管理への移行にかかわらず、自治会において管理すべきもの」である。 職員の不正で損害が出ればその個人に賠償が請求されるし、 自治会の関係者に故意または過失があれば自治会も責任を負う、と。
そのうえで、防ぐ仕組みも挙げていた。 地域自治担当課による定期的な訪問、会計処理の実地検査、 市が提供する準公金システムの執行状況を定期的に閲覧すること、 職員へのコンプライアンス研修。
補助金の決め方については、 「自治会の総会において(中略)住民の総意として総会などに諮り決定をされるものでありますので、 自治会長による恣意的な判断で決定できるものではない」と答えている。
同じ答弁には、住んでいる側に直接関わる話もいくつか出ていた。拾っておく。
| 項目 | どうなっているか |
|---|---|
| 公用車 | 市との協働の取組であれば自治会が使える。想定は事業の準備・片づけ、学級講座の現地研修など。予約方法や鍵の受渡しはマニュアルで示す |
| 敬老会 | これまでどおり各自治会で実施 |
| ごみ出し | 自治会に入っているかどうかに関係なく、ごみステーション管理者の了解のもとで出せる |
| 空き家取得費補助金 | 「区入り」が補助の要件。区長が署名した書類の提出が要る |
| 市政懇談会 | 4年に1回にする案が出たが、2年に1回を基本に戻した |
ごみは入っていなくても出せるが、空き家の補助金は入っていないと出ない。 この2つが同じ答弁の中に並んでいるのが、いまの制度の形をよく表していると思う。
市が区入りを補助の条件にしている理由も述べられていた。 平成27年の地域自治推進条例で市民の役割を定めていること、 そして災害のときに隣近所の安否確認や避難所の運営という「共助」が働くことを挙げている。
最後に、同じ答弁の中でいちばん率直だった部分を引いておきたい。 女性の自治会参加について尋ねられた市の答えである。
自治会の役員や部会員は、区長をはじめ各種団体の長などで構成されている自治会が多い状況でございまして、そのような構成メンバーには男性が多く、また夫婦の世帯の場合、その代表として参加されるのは男性が多いのが現状であります
大洲市議会 令和5年12月定例会(2日目)会議録
役員が「団体の長」で構成されているから、男性が多くなる。 仕組みの説明としては、これ以上ないくらい分かりやすい。 世帯で1人が出る形になっているところも大きい、と市は述べている。
公民館がコミュニティセンターになる、というのは名前の話だと思っていた。 調べてみると、19年かけて自治会と1つにした話で、 令和9年度には地域が管理者になる話で、 誰がそこに出てくるかという話だった。 看板の掛け替えは、そのいちばん見えやすい一点だったことになる。
この記事をサイトに掲載した日: 2026/08/15