大洲市の予算、一番使われているのは「民生費」34.2%。教育費はまさかの3割

大洲市役所への道路案内標識
大洲市役所への道路案内標識(撮影: OZU LIFE MEMO)
メモう

大洲の予算でいちばん大きいのは、じつは福祉なんよ。全体の3分の1くらい。

しかも中身の多くは国や県の制度で決まってて、市が自由に動かせる分は小さいの。 のみこめた?

3行でいうと調べた資料 5本

  • 大洲市の予算で一番大きいのは福祉(民生費)の95億円34.2%
  • 内訳は高齢者・障がい者で6割弱、子どもで3割半、生活保護で1割
  • 教育費は前年比31.1%。額の多くは国や県の制度で決まっていて、市が自由に動かせる部分は小さい

大洲市の令和8年度当初予算は、全会計の総額で479億4,349万4千円(前年度比4.5%減)。このうち一般会計は278億8,000万円だ。

目的別に見ると、民生費が95億3,283万7千円で全体の34.2%。断トツの1位である。

2位は総務費(17.3%)、3位は公債費(過去の借金返済、13.2%)。

教育費は18億9,138万7千円で6.8%にとどまり、前年度比では31.1%減だ。

「民生費イコール福祉」とは言うものの、それだけでは何も分かった気がしない。予算書を開いて中身を追った。

民生費95億は、3つに割れている

予算書の款・項の表を見ると、民生費はきれいに3つの項に分かれていた。

民生費95億3,283万7千円の内訳(令和8年度当初)
社会福祉費
54.5億(57.1%)
児童福祉費
33.7億(35.3%)
生活保護費
7.2億(7.6%)
出典: 大洲市 令和8年度一般会計当初予算書。社会福祉費5,446,339千円/児童福祉費3,366,472千円/生活保護費720,026千円

ざっくり言うと、高齢者と障がい者で6割弱、子どもで3割半、生活保護で1割弱という配分になっている。

年金は入っていない。でも高齢者に約22億円が動いている

まず「年金は入っているのか」から。答えは入っていない。 国民年金の支給は国(日本年金機構)の仕事で、市の一般会計を通らない。市がやるのは窓口の相談や届出の受付までだ。

では高齢者向けのお金がないのかというと、そんなことはない。予算書の老人福祉費のページを開くと、大きな数字が並んでいた。

  • 介護保険特別会計繰出金 9億3,918万円
  • 県後期高齢者医療広域連合負担金 7億2,467万円
  • 後期高齢者医療特別会計繰出金 3億1,200万円
  • 大洲喜多特別養護老人ホーム事務組合負担金 2億5,113万円
  • 老人ホーム入所措置事業 2,203万円
  • 心配ごと相談所設置事業 206万円、緊急通報装置貸与事業 48万円 など

上位4つを足すと約22億3,000万円。民生費のおよそ4分の1が、高齢者関係でここに集まっている。

ただし、ここが面白いところだ。この22億円の大部分は、市が自分で何かサービスを提供する費用ではない。

介護保険特別会計への「繰出金」、後期高齢者医療の広域連合への「負担金」、特別養護老人ホームを共同運営する事務組合への「負担金」。

いずれも別の会計や別の組織へお金を送る科目で、実際のサービスはその先で行われる。

介護保険も後期高齢者医療も市の一般会計とは別の特別会計で回っていて、一般会計の民生費に載っているのは市が法律で負担することになっている取り分だけなのだ。

「年金ですか」という問いへの正確な答えは、年金ではないが、年金と同じくらい制度として決まっている支出、ということになる。

単独で一番大きい事業は、高齢者でも子どもでもなかった

当初予算の概要に載っている主要事業を金額順に並べると、民生費の単独最大事業がはっきりする。

介護給付・訓練等給付事業、14億1,745万2千円。名前に「介護」とあるが、これは高齢者の介護保険ではなく、障害者総合支援法にもとづく障がい福祉サービスだ。

所管も社会福祉課である。内訳は介護給付費・訓練等給付費が11億9,395万6千円障がい児通所給付費が2億1,015万3千円、身体障がい者(児)補装具給付費が1,018万9千円。

ホームヘルプ、生活介護、就労支援、放課後等デイサービスといったサービスの費用がここに入る。

福祉というと高齢者と子どもの話になりがちだが、金額の山は障がい福祉にあるというのは、予算書を開かないと見えない事実だった。

子ども向け33億7,000万円の中身

児童福祉費のほうも、主要事業を並べると具体的になる。

  • 児童手当支給事業 7億4,960万5千円(3歳未満は月15,000円、3歳以上高校生年代まで月10,000円、第3子以降は月30,000円)
  • 認定こども園運営経費 3億5,553万2千円(粟津保育所と徳森保育所を移転改築)
  • 放課後児童健全育成事業 1億8,328万7千円(放課後児童クラブを15クラブ開設)
  • 子ども医療費 1億6,415万7千円(高校生世代までの通院・入院を無償化)
  • 徳森こども園などの保育所運営経費 1億6,439万3千円
  • 第2子以降保育料無料化事業 6,753万5千円(給食費の無料化2,305万1千円を含む)
  • 子育て環境整備事業 5,303万3千円(若年出産世帯応援事業補助金は35歳以下で30万円)
  • 病児保育事業 4,055万6千円(病児保育室くれよん)
  • 妊婦のための支援給付金事業 2,090万4千円(妊娠時5万円・出産時5万円)

「子育て支援に力を入れている」という言い方は抽象的だが、こうして金額で並べると、市が実際にどこへ賭けているかが見える。

児童手当だけで7億5,000万円近い。これは市が配る額ではなく国の制度による給付だが、市の会計を通って支払われている。

生活保護費7億2,000万円の中に、最高裁判決の後始末が入っていた

3つ目の生活保護費は7億2,002万6千円。主要事業を見ていて、思わぬものを見つけた。

「生活保護扶助費追加支給事業 3,437万2千円」という新規事業がある。

説明にはこう書かれていた。平成25年から実施された生活扶助基準改定に関する最高裁判所判決(令和7年6月27日)への対応として、新たな水準を設定した差額分を当時の受給者に追加給付する。対象世帯は543世帯。

13年前の引き下げが違法だったと最高裁が判断し、その差額を今になって払い直す。

その金額と対象世帯数が、市の予算書に淡々と1行で載っている。

この判決そのものについては「13年前の『合法』が、実は違法だった。生活保護基準改定、大洲市も追加給付へ」に詳しく書いた。

ニュースで見た話が、自分の市の予算のどこに落ちているかが分かるのは、予算書を開く数少ない楽しみだと思う。

骨格予算でも、民生費だけはほとんど減らない

教育費の3割減には「骨格予算だから」という説明がついている。

令和8年5月に市長の改選期があるため、当初予算は新市長が組み直す前提の暫定版だ、という話だ。

それは事実で、一般会計の総額そのものが前年度の308億7,000万円から278億8,000万円へ、9.7%減っている。 ただ、減り方は費目によってまったく違った。

令和8年度当初予算の前年度比(減少率が大きい順)
教育費
31.1%減
衛生費
21.0%減
総務費
13.2%減
一般会計全体
9.7%減
公債費
5.3%減
民生費
1.3%減
出典: 大洲市 令和8年度一般会計当初予算書「款別歳出」。民生費だけは1億2,901万9千円の減にとどまる

全体が9.7%減る中で、民生費は1.3%しか減っていない。理由ははっきりしている。

民生費の大半は、法律で支給や負担が決まっている義務的経費だからだ。

児童手当も、介護保険への繰出金も、後期高齢者医療の負担金も、市長が代わるからといって止められない。

骨格予算とは「市長の判断が要る事業を先送りする」予算であって、判断の余地がない支出はそのまま残る

民生費の割合が34.2%と高く見えるのは、他が削られたぶん相対的に浮き上がった面もある。

で、6月補正で教育費は戻ったのか

骨格予算なら、市長が決まった後の補正予算で肉付けされるはずだ。実際に6月補正予算の概要を開いて確かめた。

肉付けは、確かに行われていた。6月補正で29億2,405万円が積み増され、一般会計は278億8,000万円から308億400万円台になった。 前年度の同期予算と比べても2.1%減まで戻っている。

ただ、どこに積まれたかを見ると話が変わる。増えた分のほとんどは総務費で、25億5,095万9千円の増。前年同期比では29.6%の増加だ。

中身は市民文化会館建設事業で、6月補正だけで25億3,921万6千円が計上されている。

昭和43年整備の現市民会館が58年経ち、移転・新築工事に着手するための予算だ。

では教育費はどうなったか。6月補正での教育費は、プラスではなくマイナス1,291万6千円だった。

補正後の教育費は18億7,847万1千円で、前年同期比は32.1%減。当初の31.1%減から、むしろ差が広がっている。

民生費は補正後も95億6,246万8千円台で前年同期比0.3%減と、ほぼ横ばいのままだ。

公平を期すために書いておくと、教育費に何も足されていないわけではない。

6月補正では部活動指導員配置事業(151万6千円、市内中学校に5人程度)が新設され、中学校給食費の無償化も令和8年7月納付分から実施されている(対象生徒821人、1食290円)。

ただし給食費無償化は財源の振り替えなので、予算総額としては増えない。

また学校給食センターの維持管理・運営については、令和9年度から令和18年度までの10年間で限度額17億5,066万円の債務負担行為が設定された。これは来年度以降の支出になる。

なお、教育費が前年より8億9,000万円近く少ない直接の理由が何かは、今回見た資料の範囲では特定できなかった。

前年度に大きな施設整備があってそれが終わった、という可能性はあるが、確認できていないので断定はしない——と書いていた。

【2026年9月3日追記】令和7年度の予算書を取り寄せて、教育費を項ごとに前年度と突き合わせた。答えは「可能性」のとおりだった。減った場所は2つに集中している。中学校費が9億7,048万円から2億5,567万円へ7億1,481万円の減小学校費が5億173万円から3億4,777万円へ1億5,396万円の減。この2項だけで8億6,877万円になり、教育費全体の減少額とほぼ重なる。

中身も特定できた。中学校費の減の大半は「大洲南中学校長寿命化改修事業」(令和7年度予算5億9,502万円)が終わったこと。学校建設費の科目は6億328万円から850万円まで縮んでいる。もうひとつは小中学校のタブレット端末の一斉更新が令和7年度で済んだことで、端末購入費は小学校1億4,770万円・中学校8,909万円が計上されていた。校舎の改修と端末の更新という2つの「山」が前年度で越えられ、令和8年度はその分だけ身軽になった——というのが8億9,000万円の正体である。学校への支出が削られたのではなく、大きな買い物が終わっただけだ。

「税金の使い道」と聞くと道路や箱物を思い浮かべる。でも実際には、福祉が断トツで一番お金がかかっている。

しかもその中身は、市が独自に決めた施策よりも、国と県の制度によって額が決まっている部分のほうがずっと大きい。

民生費が34.2%というのは、大洲市が特別に福祉に厚いという意味ではなく、少子高齢化が進んだ市の予算はそういう形になる、という話なのだと思う。

その構造の中で、市が自分の意思で動かせる部分がどこにあるのか。

予算書を1冊追ってみて、そこが一番見えにくいところだと感じた。