読んだ本を記事に変える技術

本のタイトル
「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか
著者
三宅香帆
出版社
新潮新書
読んだ本

「ネタ」に変える5つの型

三宅香帆『「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか』を読みました。

読んだり観たりしたものを「ネタ」に変える技術として、5つの型が紹介されています。

①比較(ほかの作品と比べる)②抽象(テーマを言語化する)③発見(書かれていないものを見つけて応用する)④流行(時代の視点でしか語れない切り口)⑤不易(普遍的なテーマとして語る)。

図式化しながら丁寧に整理していて、単なる感想というより「使える技術」として吸収しようとしている 読み方でした。

大洲で調べた

大洲は、愛媛県で最初に藩校ができた町でした

本書の①比較の型を、そのまま大洲に当ててみます。まず古いほうから。

平成30年6月の市議会で、市長は大洲市をこう説明していました。

大洲市は、江戸時代初期に陽明学者の中江藤樹先生が青年期まで過ごされ、その後、愛媛県内で初の藩校、止善書院明倫堂が創設されるなど文教の香り高い風土と歴史の中で、幕末には日本初の電信実験を成功させた三瀬諸淵や函館の五稜郭を設計した武田成章など、西洋の医学、科学に通じた偉人が誕生した地域であり、近年でも私たちの同級生でもあります中村修二博士がノーベル物理学賞を受賞されております。

大洲市議会 平成30年6月定例会(3日目)会議録

一文にずいぶん詰め込まれていますが、分けるとこうなります。県内で最初の藩校日本初の電信実験五稜郭の設計者。読むこと・学ぶことの蓄積が、そのまま人の名前として残っている土地だ、という説明です。

起点は1617年です。大洲藩主の加藤家と中江藤樹が大洲に入った年で、2017年がちょうど400年にあたりました。この年、市立博物館は10月から「藩校創設と中江藤樹顕彰のあゆみ」と題した企画展を開き、12月には「四国の藩校」をテーマにしたシンポジウムを開いています。

そのシンポジウムの中身が、また本書と重なります。高松・徳島・土佐・大洲という四国4県の藩校を並べて、起こりと歴史と特異性を比べるパネルディスカッションでした。1つの藩校を深く語るのではなく、4つを横に並べる。本書でいう①比較の型そのものです。

いまの大洲は、どれくらい読んでいるのか

では新しいほうはどうか。大洲市立図書館の令和7年度の個人貸出は、12万5,274冊でした。市民1人あたりに直すと年3.3冊で、県内11市のうち10番目、全国平均の約7割にあたります。

ただし、この3.3冊という平均には仕掛けがあります。1年間に実際に本を借りた人は3,382人、市民のおよそ11人に1人でした。借りた冊数をこの人数で割り直すと、借りている人は年に37冊借りていることになります。

数え方数字
市民1人あたりの貸出年3.3冊
実際に借りた人3,382人(約11人に1人)
借りた人1人あたり年37冊
新刊の棚がある書店1軒

つまり大洲の読書は「薄く広く」ではなく、濃い少数の形をしています。詳しくは大洲市民1人が年に借りる本は3.3冊大洲市に書店は何軒あるかにまとめました。

400年前の「文教の香り高い風土」と、いまの「11人に1人」。この2つを並べたとき、どちらが本当の大洲かを決める必要はないのだと思います。本書の②抽象の型でいえば、読む人の数ではなく、読んだものを外に出す回路があるかどうかが、たぶん論点です。

大洲とつながったこと

この読書コーナー自体が、本書の実践だった

実はこの「大洲と読書」コーナー自体が、この本で紹介されている技術の実践そのものです。

本を読んで、そこから大洲との接点(比較・発見)を見つけて記事にする。まさに①~⑤の型をなぞっています。

本を読むだけで終わらせず、それを大洲というフィルターを通して言葉にする。

このコーナーを続けることは、この本で学んだ技術のトレーニングでもあるのかもしれません。