大洲の視点 ・ 出典: 大洲市「令和8年度予算の概要」/6月補正予算の概要/過疎地域持続的発展計画/総務省市町村決算 ・ 約9分で読める
市の最初の予算が479億円で、あとから29億円足されたんよ。
減ったんじゃなくて、市長選の年だから最初を小さく組んであっただけ。
ただ、自分で稼ぐお金は3分の1しかないの。 のみこめた?
3行でいうと調べた資料 7本
大洲市の令和8年度当初予算は、全会計合計で479億4,349万4千円。前年度より22億6,875万7千円(4.5%)減った。
一般会計だけを見ると、もっと落ち込みが激しい。278億8,000万円で、前年度の308億7,000万円から29億9,000万円(9.7%)の減だ。
市が財政破綻に向かっているのかと思ったが、そうではなかった。この予算は「骨格予算」だった。
当初予算の概要PDFの1ページ目に、その理由がはっきり書いてある。
「令和8年度当初予算は、5月に市長の改選期が控えていることから骨格予算としていますが(後略)」
市長選挙が春にある年は、新しい市長が自分の政策を予算に入れられるよう、3月時点では最低限の予算だけを組むのが慣例になっている。
人件費や扶助費、既に続いている事業といった「骨格」だけを先に固め、新規事業などの「肉づけ」は選挙後の補正予算に回す、という組み方だ。
令和8年度当初予算書には、市長選挙費として3,335万円が計上されていた。
告示日は令和8年4月19日、投票日は4月26日。今回から候補者の氏名・経歴・政見・写真を載せた選挙公報が発行される、という注記もある(関連経費37万3千円)。
つまり、479億円という当初予算の数字は、1年間の市の姿を表していない。この時点で比べても意味が薄い。
では、肉づけ後はどうなったのか。令和8年度6月補正予算の概要を開いた。
| 会計 | 当初予算 | 6月補正 | 補正後 |
|---|---|---|---|
| 一般会計 | 278億8,000万円 | +29億2,405万円 | 308億405万円 |
| 特別会計 | 123億5,897万8千円 | 539万9千円減 | 123億5,357万9千円 |
| 企業会計 | 77億451万6千円 | 1,121万7千円減 | 76億9,329万9千円 |
| 合計 | 479億4,349万4千円 | +29億743万4千円 | 508億5,092万8千円 |
一般会計は308億405万円まで戻った。前年度当初の308億7,000万円とほぼ同じ水準である。
全会計合計は508億5,092万8千円で、対前年度同期比+0.1%。市自身がそう書いている。
当初だけを見れば9.7%減、6月補正まで含めればほぼ横ばい。「予算が減った」という話ではなかった。
補正で足された主なものは以下のとおり。
前年度(令和7年度)の502億1,225万1千円は「合併後最大」と言われることがある。
当初予算の概要PDFには9年分の推移が載っていたので、確かめてみた。
| 年度 | 一般会計 | 特別会計 | 企業会計 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 平成30年度 | 277.6億円 | 131.8億円 | 66.4億円 | 475.8億円 |
| 平成31年度 | 286.1億円 | 130.5億円 | 64.2億円 | 480.8億円 |
| 令和2年度 | 302.7億円 | 121.2億円 | 80.4億円 | 504.2億円 |
| 令和3年度 | 298.3億円 | 120.3億円 | 86.9億円 | 505.4億円 |
| 令和4年度 | 297.0億円 | 119.9億円 | 88.2億円 | 505.1億円 |
| 令和5年度 | 298.7億円 | 119.9億円 | 80.7億円 | 499.3億円 |
| 令和6年度 | 302.5億円 | 119.0億円 | 78.5億円 | 500.0億円 |
| 令和7年度 | 308.7億円 | 120.5億円 | 73.0億円 | 502.1億円 |
| 令和8年度 | 278.8億円 | 123.6億円 | 77.0億円 | 479.4億円 |
全会計の合計で見れば、最大は令和3年度の505.4億円だった。
令和7年度の502.1億円は3番目である。「最大」だったのは一般会計の308.7億円のほうだ。この9年で最も大きい。
令和2~4年度に企業会計が80億円台まで膨らんでいるのは、水道・下水道・病院といった企業会計の投資が重なった時期だからで、その分が抜けたぶん合計が下がっている。
「予算総額が過去最大」と「一般会計が過去最大」は別の話だと確認できた。
令和8年度は特別会計に新しい枠が1つ増えている。長浜港内港埋立事業特別会計(3億9,230万円)の新設だ。
特別会計が前年度より2.6%増えたのは、主にこれが効いている。
予算の大きさより、中身のほうが問題だと思う。令和8年度一般会計の歳入内訳はこうなっている。
一番大きいのは市税ではない。地方交付税108億9,038万5千円(39.1%)である。
市が自分で集める市税49億2,288万3千円(17.7%)の、2.2倍にあたる。
市はこれを「自主財源」と「依存財源」にも分けて公表している。
大洲市が使うお金の3分の2は、自分で集めたものではない。
この構造は、市自身も課題として認識している。令和8年3月に策定した過疎地域持続的発展計画には、「財政力指数は0.35であるため、地方交付税に依存している状態が続いており、自主財源の確保が大きな課題となっています」とはっきり書かれている。
財政力指数0.35は、標準的な行政サービスに必要なお金の35%しか自前の税収で賄えていない、という意味だ。
全国と比べるとどうか。総務省の令和6年度市町村普通会計決算によると、市町村の財政力指数の単純平均は0.49だった。大洲市の0.35は、これを0.14ポイント下回っている。
愛媛県内で並べると、新居浜市0.77、松山市0.74、四国中央市0.72、松前町0.68、西条市0.63、伊方町0.60、今治市0.53、東温市0.49、砥部町0.42、伊予市0.41と続き、大洲市0.35は20市町中11位。
ちょうど真ん中である。下には宇和島市0.34、八幡浜市0.32、内子町0.27、西予市0.25、久万高原町0.21、上島町と松野町の0.15が並ぶ。
「国に頼っている」のは大洲市固有の状態ではなく、県内の大半がそうだ、というのが実際のところだった。
出ていく側も見ておきたい。令和8年度一般会計の歳出を「性質別」に分けると、こうなる。
| 区分 | 金額 | 割合 |
|---|---|---|
| 義務的経費 | 144億5,187万5千円 | 51.8% |
| うち人件費 | 61億3,860万円 | 22.0% |
| うち扶助費 | 46億3,296万1千円 | 16.6% |
| うち公債費 | 36億8,031万4千円 | 13.2% |
| その他の経費 | 116億9,444万9千円 | 42.0% |
| 投資的経費 | 17億3,367万6千円 | 6.2% |
義務的経費が51.8%。人件費・扶助費(児童手当や医療費助成など)・公債費(借金の返済)は、市の判断で減らせるものではない。
一方、道路や学校を新しく作るための投資的経費は6.2%しかない。
骨格予算なので普通よりかなり低く出ている点は割り引く必要があるが、それでも構図は分かる。
市が「今年これをやろう」と決められる余地は、予算全体のごく一部だ。
目的別で見ると、最大は民生費95億3,283万7千円(34.2%)。
次いで総務費48億2,310万4千円(17.3%)、公債費36億8,031万4千円(13.2%)、衛生費26億4,853万1千円(9.5%)、土木費21億7,082万8千円(7.8%)と続く。
民生費の中身については、大洲市の予算、一番使われているのは「民生費」34.2%。教育費はまさかの3割減のほうで詳しく分解した。
規模を実感するために、人口で割ってみる。
大洲市の人口は37,725人(令和8年7月末、住民基本台帳)。世帯数は19,227世帯だ。
もちろん個人に配られるわけではないし、市税には法人市民税や固定資産税も含まれるので「1人13万円払っている」という意味でもない。
ただ、市民1人につき、税金として市に入る13万円の倍以上、およそ29万円が国から回ってきて、市の暮らしを支えているという比率は、頭に入れておいてよい数字だと思う。
「合併以来最大の予算」と聞くと、市が豊かになったように感じる。
でも中身を開くと、大きくなっているのは国から回ってくるお金と、義務的に出ていくお金のほうだった。
過疎地域持続的発展計画には、この先の見通しも書かれている。実質公債費比率は平成17年度決算の23.1%から令和6年度決算の8.3%まで大幅に改善したが、「今後は、学校施設の耐震化や復興事業等で借り入れた市債の償還により、数値が上昇する見込み」とある。市民文化会館の64億円も、これから償還が始まる。
そして、すでに経常収支比率は99.7%に達している。毎年入ってくるお金の99.7%が、毎年必ず出ていくお金で埋まっているという意味だ。
この数字が何を意味するのかは、大洲市の「経常収支比率」99.7%を中高生でも分かるように読み解くのほうで丁寧に書いた。
予算書は読みにくい。ただ、当初予算だけを見て「9.7%減った」と早合点しかけた自分としては、骨格予算と補正予算をセットで見ないと数字の意味が変わるというのが、今回一番の収穫だった。
次に予算のニュースを見るときは、それが当初なのか補正後なのかを最初に確かめようと思う。