幸福度と自己決定(3冊横断)

読んだ本
あっというまに人は死ぬから(佐藤舞・KADOKAWA)/子ども若者抑圧社会・日本(室橋祐貴・光文社新書)/残酷すぎる幸せとお金の経済学(佐藤一磨・プレジデント社)
読んだ本

3冊に共通して登場した、同じ調査データ

『あっというまに人は死ぬから』『子ども若者抑圧社会・日本』『残酷すぎる幸せとお金の経済学』の 3冊に、同じ研究データが登場していたことに気づきました。

神戸大学が2018年に約2万人を対象に行った調査によれば、幸福度は所得や学歴と同じくらい「自己決定」 と相関が高いそうです。自分で決めた人生は、後悔しにくい。

『あっというまに人は死ぬから』では、スマホやSNSに時間を溶かしてしまう自分への内省として。

『子ども若者抑圧社会・日本』では、子ども・若者の自己決定権という文脈で。

『残酷すぎる幸せとお金の経済学』では、SNS利用と幸福度を検証する統計データの一部として。

同じ研究が、それぞれ違う角度で引用されているのが興味深かったです。

大洲の数字

大洲の「幸せ」の中身は、こう答えられていました

神戸大学の研究と直接は比べられませんが、大洲にも幸福度を聞いた調査があります。

令和3年に市が行った市民アンケートです。20歳以上を無作為抽出して郵送で実施し、配布3,994票・回収1,786票(回収率44.7%)。健康寿命の代わりのものさしとして市が使っている調査でもあります。

幸福度の回答はこうでした。「とても幸せ」12.7%、「まあまあ幸せ」68.9%。足すと81.6%が幸せ側です(自分で足しました)。

もっと近いのが、「幸せを感じる要因」を優先度の高い順に3つ選んでもらった設問です。

幸せを感じる要因選んだ割合
家族・友人83.2%
健康75.9%
お金44.2%
趣味38.1%

3冊が共通して引いていた研究は、幸福度に効くのは所得や学歴より「自己決定」だ、というものでした。大洲のアンケートでは、お金は44.2%で、家族・友人(83.2%)のおよそ半分です。方向としては同じことを言っています。

ただし、この設問に「自分で決めたこと」という選択肢はありません。 大洲のアンケートは自己決定を測っていないので、研究と並べて読むのはここまでです。ここは正直に書いておきます。

「ここに住む」は、86.5%が続けると答えていました

「大洲に住む」という選択そのものについては、別の調査があります。

平成28年6月の市議会で紹介された、大洲市まち・ひと・しごと創生総合戦略の市民意向調査です。「これからもずっと住み続けたい」と「当分は住み続けたい」の合計が86.5%という高い定住意向でした。

ただ、この86.5%は2つの答えを足した数字です。「ずっと」と「当分は」では、決めた度合いがだいぶ違います。内訳は答弁に出てきませんでした。自己決定という言葉で読もうとするなら、本当は「ずっと」のほうだけを見たいところです。

市の決めごとに意見を出した人は、5人でした

「自分で決めた」を、暮らしではなく町のほうで測ると、はっきりした数字が出ます。

第3次大洲市総合計画の基本構想(案)へのパブリックコメントです。2035年までの9年間、市が何を目指すかを決める、いちばん上の計画でした。募集期間は30日。結果はこうです。

意見を出した人5人(持参2人・電子メール3人)、意見の件数21件、反映されたのは1件。人口3万7,725人の市で、5人です。

それでも、その1件は数字を動かしました。「目標人口が社人研準拠の推計より低いのはおかしい」という指摘に、市は「ご指摘のとおり」と答え、2035年の目標人口を30,000人から31,000人へ、1,000人引き上げています。

5人でも動く。ただし5人しかいなかった。自己決定という言葉を市政に当てはめると、この2つが同時に事実になります。

意見を入れる箱は、市内に置いてあります

言う場所そのものは、ちゃんと用意されています。市民ポストです。

令和6年12月の市議会で、総務部長がその扱いを説明しています。投函された提言用紙は「受理後、まず市長まで閲覧されます」。回答が要るものは関係部署が処理し、回答案は部局内の承認を通ってから返される。箱は本庁だけでなく、各支所と21のコミュニティセンターにも置かれています。

では、実際にどれだけ使われているのか。公開されている回答を1本ずつ数えたら、8年半で76本でした。年に平均9本です。年度ごとのむらも大きく、令和元年度は27本、令和3年度は3本でした。

公開されるのは投稿者が公表を認めた分だけなので、実際の提言はもっとあります。令和5年度は提言16件に対して、公開された回答が7本でした。

「自分で決めたと思えることは何ですか」。この問いを大洲で聞くとき、暮らしの側の答えは人それぞれだと思います。ただ町の側については、9年の計画に5人、8年半の箱に76本という数え方ができてしまう。研究が言う「自己決定」を町のスケールに置き換えると、まずこの数字が出てくることになります。

大洲とつながったこと

「自分で決めた」と思えることは何か

「自己決定」というキーワードで大洲を考えると、「大洲のとなり人」の企画とも重なります。

大洲に暮らす人が、何を自分で決めて、今の暮らしを選んでいるのか。

3冊がそろって同じ研究データにたどり着いたのは偶然ではないはずです。

いつか大洲に住む人に「自分で決めたと思えることは何ですか」と聞いてみたいと思いました。