大洲の自由研究 #10
市に入ってくるお金のうち、市が自分で集めているのが市税だ。 その市税が、この四半世紀でどう動いたのか。 総額しか見たことがなかったので、税目別に24年分を全部並べてみた。 やってみて、いちばん驚いたのは軽自動車税だった。
人口は26%減っとるのに、市税は4.5%しか減っとらんのよ。
税目別に24年分を全部並べて、やっと分かった。
いちばん驚いたんは軽自動車税。24年で2倍になっとる。
使ったのは総務省の決算カードである[1]。 市町村ごとに1枚、その年度の決算が1ページにまとまった様式で、右上に「市町村税の状況」という表が必ず入っている。 個人均等割、所得割、法人均等割、法人税割、固定資産税、軽自動車税、市町村たばこ税、都市計画税—— 税目ごとの収入済額が、そこに千円単位で載っている。
総務省のサイトに載っているのは平成13年度(2001年度)から令和6年度(2024年度)までの24年分だ。 平成26年度までは愛媛県内の全市町村をまとめたPDF、平成27年度以降はExcelで公開されている[2][3]。 もう一つの「市町村別決算状況調」は平成14年度分までしかさかのぼれなかったので、決算カードを主軸にした[4]。 仮に30年分と言いたくても、平成12年度以前は国の公開分では取れない。ここは正直に24年で切っている。
ややこしいのは合併だ。大洲市は平成17年1月11日に、旧大洲市・長浜町・肱川町・河辺村の4市町村が合併してできている。 だから平成13〜15年度の決算カードは4枚ある。時系列をつなぐために、この4枚の数字を税目ごとに自分で足した。 足さないと、平成16年度に市の規模が急に大きくなったように見えてしまう。
合併年度(平成16年度)のカードは新しい大洲市が1枚だけで、旧4団体の分を合算した形になっている。 本当につながっているのか不安だったので、制度改正の影響を受けにくい税目で確かめた。 軽自動車税は平成15年度の4団体合計が10,301万円、平成16年度が10,479万円。 市たばこ税は31,171万円と31,770万円。 どちらもなめらかにつながっていたので、合算のやり方は間違っていないと判断した。
人口は決算カードに載っている住民基本台帳人口を使った。ただし基準日が途中で変わっている。 平成24年度までは翌年3月31日時点、平成25年度からは翌年1月1日時点だ。 年度末と年始で3か月ずれるが、24年で1万4千人減るという大きさの前では影響は小さい。それでも、ここは断っておく。
金額はすべて決算額(収入済額)である。当初予算の数字とは別物なので、 後半で予算の話が出てくるところでは、そのつど断り書きを入れる。
単位は万円。決算カードの千円単位を10で割った。
| 年度 | 個人市民税 | 法人市民税 | 固定資産税 | 軽自動車税 | 市たばこ税 | 市税計 | 人口 | 1人あたり |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 平成13(2001) | 139,059 | 46,940 | 230,891 | 9,761 | 31,022 | 457,897 | 53,131 | 86,183円 |
| 平成14(2002) | 133,030 | 70,367 | 234,218 | 9,984 | 30,451 | 478,251 | 52,818 | 90,547円 |
| 平成15(2003) | 125,594 | 45,152 | 224,627 | 10,301 | 31,171 | 437,042 | 52,499 | 83,248円 |
| 平成16(2004) | 121,793 | 40,692 | 233,754 | 10,479 | 31,770 | 438,574 | 52,144 | 84,108円 |
| 平成17(2005) | 124,254 | 42,292 | 236,705 | 10,878 | 30,690 | 444,906 | 51,518 | 86,359円 |
| 平成18(2006) | 128,876 | 40,908 | 227,281 | 11,099 | 30,862 | 439,111 | 51,020 | 86,066円 |
| 平成19(2007) | 158,909 | 41,640 | 231,068 | 11,267 | 30,143 | 473,116 | 50,369 | 93,930円 |
| 平成20(2008) | 154,746 | 38,890 | 236,382 | 11,537 | 28,591 | 470,234 | 49,564 | 94,874円 |
| 平成21(2009) | 150,802 | 36,802 | 227,001 | 11,896 | 27,672 | 454,271 | 48,811 | 93,067円 |
| 平成22(2010) | 140,635 | 36,321 | 227,622 | 11,902 | 28,013 | 444,588 | 48,148 | 92,338円 |
| 平成23(2011) | 137,230 | 37,513 | 226,939 | 12,006 | 32,117 | 445,882 | 47,601 | 93,671円 |
| 平成24(2012) | 144,896 | 37,002 | 214,847 | 12,294 | 31,302 | 440,420 | 47,244 | 93,222円 |
| 平成25(2013) | 146,210 | 33,073 | 221,447 | 12,639 | 34,440 | 447,900 | 46,911 | 95,479円 |
| 平成26(2014) | 148,227 | 39,085 | 225,522 | 12,723 | 33,877 | 459,505 | 46,311 | 99,222円 |
| 平成27(2015) | 150,039 | 33,838 | 220,135 | 13,301 | 32,821 | 450,218 | 45,539 | 98,864円 |
| 平成28(2016) | 150,752 | 32,643 | 218,708 | 15,644 | 31,634 | 449,469 | 44,872 | 100,167円 |
| 平成29(2017) | 152,865 | 34,014 | 219,324 | 16,284 | 30,271 | 452,839 | 44,266 | 102,299円 |
| 平成30(2018) | 147,099 | 31,098 | 209,502 | 16,727 | 29,773 | 434,287 | 43,400 | 100,066円 |
| 令和元(2019) | 147,688 | 35,147 | 214,286 | 17,658 | 30,154 | 445,061 | 42,706 | 104,215円 |
| 令和2(2020) | 150,311 | 29,963 | 212,808 | 18,424 | 29,006 | 440,595 | 42,004 | 104,894円 |
| 令和3(2021) | 150,428 | 33,300 | 208,459 | 18,847 | 31,494 | 442,633 | 41,300 | 107,175円 |
| 令和4(2022) | 154,122 | 30,032 | 212,826 | 19,299 | 33,806 | 450,221 | 40,580 | 110,947円 |
| 令和5(2023) | 155,424 | 29,100 | 210,872 | 19,379 | 33,728 | 448,622 | 39,867 | 112,530円 |
| 令和6(2024) | 141,779 | 33,583 | 210,121 | 19,558 | 32,300 | 437,464 | 39,040 | 112,055円 |
表1: 税目別の収入済額(万円)と人口。平成13〜15年度は旧4市町村の合算。1人あたりは独自計算[1][2][3]
図1: 税目別の折れ線。固定資産税がいちばん大きく、軽自動車税だけが一度も下がらずに増え続けている
まず総額を見る。平成13年度が45億7,897万円、令和6年度が43億7,464万円。 差は2億433万円で、24年でマイナス4.5%にしかならない。
いちばん多かったのは平成14年度の47億8,251万円。いちばん少なかったのは平成30年度の43億4,287万円。 24年の間、市税は43億円から47億円の間をずっと行ったり来たりしている。
一方、人口は53,131人から39,040人になった。14,091人減って、マイナス26.5%である。
総額を人口で割ってみた。この割り算は自分でやったものだ。
図2: 総額と1人あたりの逆行。人口の下り坂を背景に、総額は横ばい、1人あたりは右肩上がり
86,183円が112,055円になった。プラス30.0%である。 総額は減っているのに、市民1人あたりに割り当てた市税は3割増えている。
ここで急いで付け加えておく。これは「市民1人ひとりの税負担が3割重くなった」という意味ではない。 市税には法人が納める分も、事業用の資産にかかる分も、市外の人が大洲市内で買ったたばこの分も入っている。 あくまで「市の税収を市民の頭数で割った」だけの数字だ。
それでも見る意味はある。行政サービスの費用は、人数に比例しては減らないからだ。 道路も橋も学校も、人が減ったからといって同じ割合で減らせるものではない。 1人あたりの税収が増えているということは、裏返せば1人あたりで支えている量が増えているということでもある。
税目ごとの伸び率を並べる。
| 税目 | 平成13年度 | 令和6年度 | 24年の増減 |
|---|---|---|---|
| 軽自動車税 | 9,761万円 | 19,558万円 | +100.4% |
| 市たばこ税 | 31,022万円 | 32,300万円 | +4.1% |
| 個人市民税 | 139,059万円 | 141,779万円 | +2.0% |
| 固定資産税 | 230,891万円 | 210,121万円 | -9.0% |
| 法人市民税 | 46,940万円 | 33,583万円 | -28.5% |
表2: 税目別の24年の増減。増減率は表1から計算した
軽自動車税だけが、きれいに2倍になっている。 しかも24年のうち、前年を下回った年が一度もない。 人口が26%減った市で、これは異様な形の折れ線だ。
理由の一部は台数だろうが、はっきり効いているのは税率の引き上げである[11]。 平成26年9月の市議会で、市税条例改正の中身がこう説明されている[19]。 「二輪車については平成27年度から最低税額を2,000円とし、現行の税額の約1.5倍に引き上げられる。 また、三輪及び四輪の軽自動車については、平成27年4月1日以降に初めて新規検査を受けるものから、 自家用乗用車にあっては現行の1.5倍に、その他の区分の車両については1.25倍に引き上げられる」。 同じ議事録には、反対討論として「乗用車の場合、現行7,200円が1万800円になり、 車を買いかえないで古い車に乗っていると1万2,900円になる」という具体的な数字も残っている。
数字にもそのまま出た。平成27年度13,301万円が平成28年度15,644万円で、1年で17.6%増えている。 この段差は、大洲市で急に軽自動車が売れたからではない。新税率と経年車の重課が効き始めた年だからだ。
現在の大洲市税条例(第82条)は、軽四輪の自家用乗用を年額10,800円と定めている[5]。 これは国の標準税率そのままで、市が上乗せしているわけではない。
1人あたりで見ると、もっと極端になる。1,837円が5,010円で、2.73倍だ。 税率の引き上げと人口減が、同じ方向に効いている。
固定資産税は市税のおよそ半分を占める、大洲市のいちばん大きな柱だ。 構成比は平成13年度に50.4%、令和6年度で48.0%。24年でマイナス9.0%と、ゆるやかに減っている。
ただ、この「ゆるやか」は平均の話で、実際の動き方にははっきりした周期がある。 土地と家屋の評価額は3年に1度の基準年度に見直され、間の2年は据え置かれる。 これを評価替えという[12]。
図3: 固定資産税の前年差23年分。評価替えの8回は、8回とも前年を下回った
評価替えの年度は8回あって、8回とも前年を下回っている。 評価替えではない15年のうち、10年は前年より増えている。 ここまできれいに周期が出るとは思っていなかった。
いちばん下がったのは平成24年度のマイナス1億2,092万円だ。これは議会の記録とも一致する。 平成25年12月の定例会で、ある議員が「当市も固定資産税が3年に1度の評価替えの影響により1億2,100万円の減となり、 市税全体で5,400万円の減少となり」と発言している[18]。 市税全体の減少額も、決算カードから計算すると5,462万円だった。 発言の数字と決算カードの数字が両方とも合ったので、この記事の集計方法はたぶん間違っていない。
平成24年3月の議会では、市の側が見積もりの考え方を説明している[17]。 「基幹税である固定資産税は3年に一度の評価替えに当たり、家屋の減価償却、 地価の下落や土地の負担調整措置等の一定水準への到達等による減少を見込んでおります」。 地価が下がり続けているのだから、3年ごとに評価をやり直せば下がる。 それを市も最初から織り込んで予算を組んでいる。
評価替えのたびに固定資産税が必ず減るのは、市内45地点の地価を44年分並べた別の記事で確かめたとおり、 大洲の地価が1996年ごろをピークに、2002年から25年間ただの一度も前年を上回っていないからで、 その長い下り坂を3年に1度だけ税額に写しているのが、この8回のマイナスである。
なお、令和3年度の減り方(マイナス4,350万円)には、新型コロナ対策として中小事業者の固定資産税を軽減した措置も混ざっている。 令和4年3月の議会で、市は令和4年度に固定資産税が増える理由の一つとして 「新型コロナウイルス感染症の影響を受ける中小事業者等における固定資産税の軽減措置が令和3年度に限られたものであったこと」を挙げている[20]。 評価替えの影響だけを取り出した数字ではないので、そこは割り引いて読む必要がある。
個人市民税の折れ線には、24年でいちばん大きな段差がある。 平成18年度の128,876万円が、平成19年度に158,909万円。1年で3億33万円、23.3%増えている。
大洲市が急に豊かになったわけではない。三位一体改革の税源移譲である[9]。 国の所得税から地方の個人住民税へ約3兆円を移し、個人住民税を一律10%(市町村6%・道府県4%)にした改正が、平成19年度から効いた。 総務省の説明では「ほとんどの方は、平成19年1月分から所得税が減り、そのぶん平成19年6月分から住民税が増えて」いる。
市も同じ説明をしている。平成20年12月の議会で「平成19年度では国から地方への税源移譲などによる影響により、 対前年度比約3億4,000万円、7.7%の増となり、47億円を上回る収入となっております」と報告されている[13]。 市税全体で3億4,000万円増。決算カードから計算した平成18→19年度の増加額は3億4,005万円、伸び率7.7%で、ここも一致した。
平成22年6月の議会では、市長がこの点をわざわざ念押ししている[15]。 「所得税が減り、その分住民税がふえたもので、所得税と住民税を合わせた個人の税負担は基本的に変わらないものと考えております」。 市民の手取りが増えたわけでも減ったわけでもなく、同じ税金の受け取り手が国から市に移っただけだという説明だ。
段差はもう一つある。平成15年度に32,090万円だった個人均等割が、平成16年度に47,027万円、平成18年度には60,233万円まで増えている。 3年で1.9倍だ。これも制度で、生計を同じくする妻に対する均等割の非課税措置が段階的に廃止された時期にあたる。 均等割は所得に関係なく定額で課される部分なので、対象者が増えれば素直に税収が増える。
そして直近にも制度の穴がある。令和6年度の個人市民税は141,779万円で、前年より1億3,645万円減っている。 これは定額減税だ。決算カードの歳入欄には「定額減税減収補塡特例交付金 1億5,422万円」が計上されている[2]。 減った分は国から補塡されているので、令和6年度の落ち込みを「大洲の所得が減った」と読むのは間違いである。 同じ年に個人均等割も6,669万円から5,795万円へ13.1%落ちているが、 これは東日本大震災の復興財源として上乗せされていた住民税均等割500円が令和5年度で終わったためだ。
法人市民税は24年でマイナス28.5%。5税目で唯一、はっきり減った税目である。
ただし、減り方が予想と違った。
東大洲にあったパナソニック四国エレクトロニクス大洲工場(旧・松下寿電子工業)が平成22年3月末で閉鎖されている。 市議会にはその影響を心配する質疑が何度も出ていて、平成22年3月の議会では総務部長が 「平成23年度以降につきましては、具体的な税額は守秘義務があり申し上げられませんが、 法人市民税は全額が減収」と答弁している[14]。 同じ年の6月には副市長が、閉鎖の影響で「平成22年度に固定資産税が約9.5%の減収となっております」とも述べている[15]。
では、その平成23年度の法人市民税はどうなったか。
| 年度 | 法人市民税 |
|---|---|
| 平成21年度(2009) | 36,802万円 |
| 平成22年度(2010) | 36,321万円 |
| 平成23年度(2011) | 37,513万円 |
| 平成24年度(2012) | 37,002万円 |
表3: 工場閉鎖(平成22年3月)をまたぐ4年間の法人市民税
減っていない。むしろ前年より1,192万円増えている。
理由を断定はできない。ただ、同じ議会にヒントらしきものは出ていた。 平成22年9月の議会で副市長が、法人市民税の調定状況について 「大手家電量販店の出店などを要因といたしまして、現時点では対前年度比100.6%と ほぼ前年度内で推移をいたしております」と答えている[16]。 一つの大きな工場が抜けた穴を、別の業種が同じ年に埋めていた形になる。
「大企業が去った=税収が崩れた」という筋書きは、少なくとも法人市民税の折れ線には出ていない。 これは調べる前の予想と正反対だった。 工場そのものの話は別の記事に書いたので、ここでは折れ線の形だけを見ている。
もっと大きく動いている年は別にある。旧大洲市だけを取り出すと、平成14年度の法人税割が5億1,018万円で、 前年の2億6,540万円の1.9倍になっているのだ。翌平成15年度には2億5,967万円に戻っている。1年だけ突き抜けた山である。 決算カードのPDFを開いて目で確かめたので、読み取りミスではない[3]。 市議会の会議録は平成20年からしか公開されていないため、この年に何があったのかは追えなかった。 特定の企業の税額は守秘義務で公表されないので、たぶんこの先も分からない。
法人市民税がじわじわ減っているもう一つの理由は、制度側にある。 法人住民税の一部が国税に移されたからだ[8]。 総務省の説明では、平成26年度税制改正で「法人住民税法人税割の一部を地方法人税(国税)とし、 税収の全額を地方交付税の原資とする制度が創設され」、平成28年度改正でさらに進められて令和元年10月に施行されている。 市町村が直接受け取る取り分が、2段階で削られたことになる。
数字にも段差が出ている。法人税割は平成26年度の24,655万円が平成27年度に19,693万円、 令和元年度の21,437万円が令和2年度に16,512万円。改正の翌年に、それぞれ2割前後落ちている。 ただし、市に入らなくなった分は地方交付税として配り直される仕組みなので、 大洲市のように交付税を多く受け取る市にとって損得は単純ではない。 平成25年12月の議会でも「都市と地方の格差是正を図ることを目的に、新たな税収の再配分制度として 法人住民税の一部を国税化し、地方交付税の原資とすること」と、制度の趣旨のまま説明されている[18]。
市たばこ税は24年でプラス4.1%。ほとんど動いていないように見える。
ところが税率のほうは、この間に大きく動いている。 総務省の資料から、市町村たばこ税の税率(紙巻たばこ1,000本あたり)を拾うとこうなる[10]。
| 適用開始 | 税率(1,000本あたり) |
|---|---|
| 平成18年7月 | 3,298円 |
| 平成22年10月 | 4,618円 |
| 平成25年4月 | 5,262円 |
| 平成30年10月 | 5,692円 |
| 令和2年10月 | 6,122円 |
| 令和3年10月 | 6,552円 |
表4: 市町村たばこ税の税率の推移[10]
税率はほぼ2倍になった。それでも税収は横ばいだった。つまり、売れている本数がその分だけ減っている。
どれくらい減ったのか、割り算してみた。税収を税率で割れば、おおよその本数が出る。 税率が年度の途中で変わった年は使えないので、通年で同じ税率だった年度だけを並べる。
| 年度 | 税率 | たばこ税 | 推計本数 | 市民1人あたり |
|---|---|---|---|---|
| 平成19年度 | 3,298円 | 30,143万円 | 約9,140万本 | 約1,815本(91箱) |
| 平成23年度 | 4,618円 | 32,117万円 | 約6,950万本 | 約1,461本(73箱) |
| 平成26年度 | 5,262円 | 33,877万円 | 約6,440万本 | 約1,390本(70箱) |
| 令和元年度 | 5,692円 | 30,154万円 | 約5,300万本 | 約1,240本(62箱) |
| 令和6年度 | 6,552円 | 32,300万円 | 約4,930万本 | 約1,263本(63箱) |
表5: たばこ税から逆算した推計本数。「税収÷税率」で出した独自の目安で、市が把握する売渡本数そのものではない
17年で9,140万本が4,930万本。46%減った。市民1人あたりでは年91箱が63箱である。
この推計にはいくつも粗さがある。旧3級品(わかば、エコーなど)は平成31年3月まで税率が低く設定されていたので、 初期の年は本数を少なめに見積もっている可能性がある。 加熱式たばこの本数換算も、平成30年から令和4年にかけて段階的に変わっている[10]。 あくまで「税収÷税率」で出した目安であって、市が把握している売渡本数そのものではない。 それでも、半分近くまで減ったという大きさは動かないと思う。
なお、たばこ税は「大洲市内の小売店に売り渡された分」に課される。 市民が市外で買えば大洲市には入らないし、市外の人が大洲市内で買えば入る。 市民の喫煙率をそのまま表す数字ではない点も断っておく。
税目を並べていて気づいたことがある。大洲市の税率は、ほとんどが国の標準税率どおりだ[5]。 固定資産税は1.4%(市税条例第62条)、個人市民税の所得割は6%(第34条の3)、個人の均等割は年額3,000円(第31条)。どれも標準である。
ところが法人市民税だけが違う。
条例第34条の4は「法人税割の税率は、100分の8.4とする」と定めている。 国の標準税率は6.0%だ[6]。 8.4%は、地方税法が認めている上限(制限税率)そのものである。
均等割も同じだった。条例の表を見ると、いちばん小さい区分が年額60,000円。 総務省が示す標準税率は50,000円だ。 以下、144,000円・156,000円・180,000円・192,000円・480,000円・492,000円・2,100,000円・3,600,000円と9区分が並ぶが、 すべて標準税率のちょうど1.2倍になっている。1.2倍は制限税率である[6][7]。
つまり大洲市は、法人市民税については均等割も法人税割も、法律で許された上限いっぱいまで課税している。
これは大洲市だけの話ではない。総務省の「令和6年度 法人住民税・法人事業税 税率一覧表」で愛媛県内20市町を数えると、 法人税割8.4%を採っているのは12市町。市では西予市だけが標準の6.0%で、あとの10市はすべて8.4%だった。 均等割まで1.2倍にしているのは、松山・今治・宇和島・八幡浜・大洲・伊予・東温・松前・砥部の9市町である[7]。
ここで一つ、説明のつかないことに行き当たった。
決算カードには「超過課税分」という欄がある。標準を超える税率にしたことで増えた分を書く欄だ。 大洲市のカードは、平成26年度までは市町村民税に6,404万円などと数字が入っていたのに、 平成27年度からずっと「-」になっている。 同じ8.4%を採っている伊予市は、令和6年度も5,750万円と記入している[2]。 大洲市の令和6年度の法人税割は1億9,725万円だから、8.4分の2.4を掛ければ5,600万円ほどになるはずだ。
条例の附則をたどっても、この間に大洲市が標準税率へ戻した形跡はない。 第34条の4が改正されたのは平成26年10月(国税化に伴う引き下げ)と令和元年10月の2回だけである[5]。 記入漏れの可能性が高いと思うが、市に確認したわけではないので断定はしない。 ただ、決算カードの超過課税分の欄をそのまま合計している人がいたら、大洲市の分は落ちている。
税目の一覧に、ずっと「-」が並び続けたものがある。都市計画税だ。24年分、一度も課税されていない。
都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業の費用にあてるため、 市街化区域内の土地・家屋にかけることができる目的税である。かけるかどうかは市町村が決める。 大洲市税条例には、そもそも都市計画税の章がない[5]。
県内ではどうか。令和6年度の決算カードで20市町を全部見たところ、 都市計画税を取っているのは新居浜市(12億2,750万円)と八幡浜市(7,209万円)の2つだけだった[2]。 松山市ですら課税していない。愛媛県では「取らないほうが普通」なのだ。
大洲市議会の会議録を平成20年から令和8年まで全文検索したが、 「都市計画税」という語は一度もヒットしなかった。この18年間、議場で話題になったことすらない。 導入を検討して見送った、という記録すら見つけられなかった。
なお大洲市が取っている目的税は入湯税だけで、令和6年度で123万円。市税全体の0.03%である[2]。
令和6年度の決算カードで、20市町すべての市町村税と住民基本台帳人口を拾い、 1人あたりの市税を自分で計算した[2]。
図4: 県内20市町の1人あたり市町村税。大洲市は11番目、ちょうど真ん中にいる
| 順位 | 市町 | 人口 | 市町村税 | 1人あたり | 財政力指数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 伊方町 | 7,764 | 34億9,732万円 | 450,453円 | 0.60 |
| 2 | 四国中央市 | 80,965 | 159億4,511万円 | 196,938円 | 0.72 |
| 3 | 新居浜市 | 112,724 | 199億3,294万円 | 176,830円 | 0.77 |
| 4 | 西条市 | 103,413 | 169億5,963万円 | 163,999円 | 0.63 |
| 5 | 今治市 | 147,702 | 220億1,290万円 | 149,036円 | 0.53 |
| 6 | 松山市 | 496,666 | 707億950万円 | 142,368円 | 0.74 |
| 7 | 松前町 | 30,195 | 42億7,915万円 | 141,717円 | 0.68 |
| 8 | 東温市 | 32,959 | 41億5,452万円 | 126,051円 | 0.49 |
| 9 | 久万高原町 | 6,889 | 8億5,958万円 | 124,776円 | 0.21 |
| 10 | 宇和島市 | 66,981 | 79億6,310万円 | 118,886円 | 0.34 |
| 11 | 大洲市 | 39,040 | 43億7,464万円 | 112,055円 | 0.35 |
| 12 | 八幡浜市 | 30,019 | 32億9,930万円 | 109,907円 | 0.32 |
| 13 | 伊予市 | 35,173 | 38億4,322万円 | 109,266円 | 0.41 |
| 14 | 西予市 | 33,721 | 33億3,837万円 | 99,000円 | 0.25 |
| 15 | 砥部町 | 20,190 | 19億9,014万円 | 98,571円 | 0.42 |
| 16 | 愛南町 | 18,573 | 18億1,226万円 | 97,575円 | 0.23 |
| 17 | 内子町 | 14,708 | 14億3,376万円 | 97,482円 | 0.27 |
| 18 | 鬼北町 | 9,108 | 8億7,978万円 | 96,594円 | 0.23 |
| 19 | 上島町 | 6,085 | 5億4,076万円 | 88,868円 | 0.15 |
| 20 | 松野町 | 3,484 | 2億7,764万円 | 79,690円 | 0.15 |
表6: 県内20市町の1人あたり市町村税(令和6年度)。1人あたりは独自計算[2]
大洲市は20市町の11番目。ちょうど真ん中である。
目を引くのは1位の伊方町だ。1人あたり45万円で、2位の四国中央市の2.3倍、大洲市の4.0倍にあたる。 人口7,764人の町に、町税が34億9,732万円入っている。 中身を見ると固定資産税が26億8,354万円で、町税全体の76.7%。 1人あたりの固定資産税は345,639円で、大洲市(53,822円)の6.4倍になる。 発電所の設備が固定資産税の対象になっているためだ。 1つの施設が町の税収の形を決めてしまう例として、これ以上分かりやすいものはない。
もう一つ気づくのは、1人あたり市税と財政力指数がきれいには一致しないことだ。 伊方町は1人あたり45万円なのに財政力指数は0.60で、松山市(0.74)や新居浜市(0.77)より低い。 財政力指数は税収を人口ではなく「その団体に必要と算定された行政経費」で割った指標なので、 面積が広く山間部や離島を抱える団体ほど分母が大きくなる。 同じ「1人あたり」でも、ものさしを変えると順位が入れ替わる。
大洲市の財政力指数0.35は、20市町の中でも下から数えたほうが早い。 1人あたり市税では真ん中なのに財政力指数が低いのは、それだけ必要とされる行政経費が大きいということでもある。 面積432.12平方キロメートル、人口密度94人という条件が効いている。
市税の中身を追うなら、外に出ていく分も見ておきたい。
大洲市民が他の自治体にふるさと納税をすると、その分だけ大洲市の個人市民税が減る。 総務省の現況調査によると、令和8年度課税分で大洲市民1,396人が他自治体に1億299万2,300円を寄付し、 大洲市の市民税が4,780万9,146円減っている(愛媛県の県民税も3,187万2,764円減っている)[23]。
令和6年度の個人市民税141,779万円と比べると、3.4%にあたる。 年度がそろっていないので厳密な比率ではないが、桁の感覚はつかめる。 24年で個人市民税がプラス2.0%しか増えていないことを思えば、決して小さい数字ではない。
ただし、減った分がまるごと損になるわけではない。 市税が減れば地方交付税の計算上の基準財政収入額も減るので、減収額の75%は交付税で戻ってくる[15]。 手取りベースでの目減りは1,200万円ほどということになる。 そして大洲市自身も令和7年度に4億6,079万円のふるさと納税を受け入れているので、差し引きでは受け取るほうがずっと多い。 ふるさと納税全体の収支は別の記事に書いたので、ここでは市税に与える影響だけにとどめる。
決算が出ているのは令和6年度までだ。その先は予算で見るしかない。
令和7年3月の市議会で、市は令和7年度の市税を「市税全体で前年度比12%増の48億6,855万2,000円」と 見込んでいると説明している[21]。24年の表のどこにもない水準だ。 理由として挙げられたのは2つ。「個人所得における一定程度の伸び」と 「固定資産税においては償却資産の増収が見込まれること」である。
12%という伸び率には、令和6年度の定額減税の反動も含まれているとみられる。 予算と決算は別物なので、この48億円がそのまま決算になるとは限らない。 参考までに、令和6年度の当初予算は43億4,711万円で、決算は43億7,464万円。 このときは予算より決算のほうが2,753万円多かった。
令和8年3月の議会では、令和8年度の市税を「前年度比約1.1%増の49億2,288万3,000円」と見込むと 説明されている[22]。 「固定資産税や軽自動車税、環境性能割の税制改正による減収も見込まれるが、 個人住民税は所得の増加が期待され」るという理由だ。
つまり市の見立てでは、当面の市税は増える。人口が減り続けていてもだ。 理由が「所得の伸び」と「償却資産」であることを考えると、 これは物価と設備投資の話であって、人が増えるという話ではない。
では長期の見通しはどうか。総合計画や財政の資料に税収の将来推計が載っていないかを探したが、 税目別に何十年先までを見通した数字は見つけられなかった。 財政の議論は交付税や公債費が中心で、市税を長期にどう見るかという公開資料はないようだ。
正直に3つ挙げておく。
平成12年度以前の数字。決算カードは平成13年度分までしかさかのぼれない。 「市町村別決算状況調」も平成14年度分までだった[4]。 大洲市統計書と愛媛県の公開資料も見たが、税目別の長期の時系列は見つからなかった。 だからこの記事は「30年」ではなく「24年」である。
平成14年度の法人税割の山。旧大洲市の法人税割が1年だけ1.9倍になっている。 市議会の会議録が平成20年からしか公開されておらず、当時の説明が追えなかった。 特定の法人の税額は守秘義務で公表されないため、この先も分からない可能性が高い。
決算カードの超過課税分の「-」。条例では制限税率のままなのに、平成27年度以降ずっと空欄になっている。 市に問い合わせれば分かる話かもしれないが、この記事は公開資料だけで書いているので、 事実として書き留めるにとどめた。
24年分を並べる前、私はこう思っていた。人口が4分の1減れば、税収も同じくらい減っているはずだ、と。
実際は違った。人口26.5%減に対して、市税は4.5%減。1人あたりでは3割増えている。
図5: 市税の構成比。平成13年度と令和6年度で、固定資産税が半分を占める形は変わっていない
なぜそうなるのか。表を見ていて腑に落ちたのは、 市税の半分が、人の数と関係のない税目でできているということだ。 固定資産税は土地と建物にかかる。人が減っても土地は減らない。 家は空き家になっても課税対象であり続ける。 軽自動車税は台数にかかるので、世帯の人数が減って1人1台に近づけば、人口ほどには台数が減らない。
減っているのは、人と会社に直接ひもづく部分だ。法人市民税はマイナス28.5%。 個人市民税は、制度で押し上げられていなければ、たぶんもっと減っていた。
もう一つ。この24年で税収が大きく動いた年は、たいてい制度が動いた年だった。 平成19年度の税源移譲、平成22年10月と平成30年以降のたばこ税、平成27年度の軽自動車税、 平成26年と令和元年の法人住民税の国税化、令和6年度の定額減税。3年に1度の評価替えもそうだ。 大洲市が自分の意思で決めた変化は、法人市民税を上限まで取っている、という一点くらいしかない。
市税は市が自分で集めるお金だから「自主財源」と呼ばれる。 ただ、24年分の折れ線を眺めていると、その中身を決めているのはほとんど国の制度と、3年ごとの評価替えだった。 市が自分の判断で動かせる幅は、思っていたよりずっと狭い。
出典