あっという間にお金はなくなる

本のタイトル
あっという間にお金はなくなるから「足りない病」の原因と治し方
著者
佐藤舞
出版社
KADOKAWA
読んだ本

依存先を複数持つ、という「自立」

『あっという間にお金はなくなる』を読みました。「人生、お金があれば何とかなる、は幻想です」という 書き出しから始まる本です。

一番印象に残ったのは、「自立とは、誰にも依存しないことではなく、依存先を複数にしておくこと」という一文でした。

本文中と最後のページ、2回も大きく囲んで強調してしまいました。

「あなたを支える10の資本」という図も面白かったです。金融資本・健康資本・心理的資本・社会関係資本・人的資本・自然資本・文化教養資本、それに時間資本と顕示資本。

お金(金融資本)は、そのうちのひとつでしかない、という考え方です。

大洲で調べた

「依存先を複数にする」を、大洲で数えてみました

本書のいちばんの一文が「依存先を複数にしておくこと」なら、大洲では依存先が実際に何本あるのかを数えるのが、この本の正しい読み方だと思いました。金融資本以外の資本は、数えられる形で存在しているのかどうかです。

まず、いちばんはっきり数えられるのが民生委員でした。大洲市の民生委員は定数163人が全員委嘱済みで、充足率100パーセントです。全国平均は91.7パーセントなので、大洲は埋まっているほうになります。

ただし、この163人は無給です。民生委員法の第10条が「民生委員には、給与を支給しないものとする」と定めていて、出るのは実費の活動費だけです。1人あたりで見ると、約118世帯・約231人を受け持っている計算になります。詳しくは大洲市の民生委員、充足率100%の裏にある担い手不足に書きました。

もう1本が社会福祉協議会です。年間の収入は約5.8億円。ボランティア団体という語感よりずっと大きく、収入の52パーセントは介護保険事業で、実質的には市内有数の介護サービス事業者でもあります。支出の4分の3は人件費です。サロンの支援や独居高齢者の安否確認も、ここが担っています(大洲市社協の収支は5.8億円)。

依存先規模
民生委員163人(充足率100%・無給)。1人あたり約231人
社会福祉協議会年間収入 約5.8億円。うち52%は介護保険事業
市の民生費95億円。当初予算の34.2%で最大の費目

3行目の民生費は市の財布の話で、内訳は高齢者・障がい者で6割弱、子どもで3割半、生活保護で1割弱でした(大洲市の予算、一番使われているのは「民生費」34.2%)。

ただし、本数を数えると細いところもあります

一方で、依存先が1本しかない場所も、市の答弁のなかにはっきり出てきます。

令和7年12月の市議会で、市は災害時に孤立する可能性のある集落が97あると答えています。市はそこに衛星携帯電話を16台配備し、備蓄も置いています。97に対して16台ですから、1台を6集落で見ている計算です(この割り算は自前です)。この話は大洲で電波が届かない場所を調べたにまとめました。

移動のほうも同じ形をしています。市の計画書に載っていた27系統のバスのうち、そのまま残っていたのは6系統でした(大洲のバス27系統)。

こうして並べると、本書の「10の資本」は、大洲ではきれいに10本あるわけではないことが分かります。厚いところは驚くほど厚く(充足率100%の民生委員)、細いところは1本しかない(97集落に16台)。 「お金がない」という一言でまとめてしまうと、この濃淡が全部消えてしまいます。

大洲とつながったこと

大洲にある「お金以外の資本」

この「10の資本」の考え方で大洲を眺め直すと、面白いことに気づきます。

大洲には、お金には換算しにくい資本がたくさんあります。肱川や大洲城のような自然資本・文化資本、顔の見える距離で暮らせる社会関係資本。

地方は「お金がない」という文脈で語られがちですが、この本を読んだあとだと、それは資本のひとつの側面でしかないように思えてきます。

大洲にある「お金以外の資本」を、もっと言葉にして残していきたいと思いました。