にほんはなぜここまで壊れたのか

本のタイトル
日本はなぜここまで壊れたのか
著者
マークス寿子
出版社
草思社
読んだ本

「東京の郊外化する地方都市」という指摘

マークス寿子『にほんはなぜここまで壊れたのか』を読みました。

2004年に出た本で、読んでいる今との20年という時間差を意識しながらのページでした。

特に印象的だったのは「東京の郊外化する地方都市」という章です。

地方都市が、東京と同じような画一的な景観になっていく。山や海を削った直線的な開発で、地域の歴史や個性が失われていく、という批判でした。

「地方都市の若者に生きがいはあるか」という一文に、思わず反応してしまいました。

頑張って、今できることをしている人は多いはず。そう書き込みながら、自分の中の答えを探していた気がします。

大洲の数字

この本が出た翌年から、減り方のギアが変わりました

2004年という発行年は、大洲にとって偶然ではない位置にありました。

国勢調査で47年分の人口を並べ直したときに、いちばんはっきり出たのがこれです。5年ごとの減少数を並べると、1985年から2005年までの20年間は5年で1,000人から2,000人でした。ところが2005年から2010年でマイナス3,629人(-7.1%)に跳ね上がり、そこから20年、5年で3,000人台がずっと続いています。

2005年の50,786人が、2025年には37,365人。20年で13,421人、率にして26.4%減りました(国勢調査の数字から自分で計算しました)。

この本の著者が「地方都市の若者に生きがいはあるか」と書いたその翌年から、大洲の減り方の段が一段落ちています。

心配されていたのは開発でしたが、起きたのは撤退でした

本が警告していたのは、山や海を削って東京と同じ景色を作ってしまうことでした。大洲で2000年代に起きたのは、その逆です。

産業別の就業者を40年分並べたところ、第2次産業(鉱業・建設業・製造業)は2000年の7,761人から2010年の4,628人へ、10年で3,133人減っていました。4割減です。製造業だけを見ると、1990年の5,350人がピークで、2020年は2,293人。57%減りました。

会議録に、その時期の生の数字が残っています。平成21年6月の市議会で、ハローワーク大洲の有効求人倍率が平成19年4月0.75倍、20年4月0.61倍、21年4月0.39倍と示されました。翌年の答弁では、その年の5月に0.32倍まで落ちていたことも述べられています。

同じ議会で、パナソニック四国エレクトロニクス大洲工場の閉鎖が取り上げられました。議員の紹介によれば、3月28日付の愛媛新聞が報じ、約500人の従業員が配転される、という内容でした。

暮らしの側の数字も並んでいます。市内の生活保護世帯は平成18年の197世帯から平成21年5月に239世帯へ。要保護・準要保護の児童生徒は292人から329人へ増えていました。

画一的な景観になる前に、働く場所のほうが先に消えた。これがこの本の20年後の、大洲での形です。

いま、市のお金の3分の2は外から来ています

「壊れた」かどうかを、財布のかたちでも見ておきます。

財政の全体像を1枚に並べ直したときの数字です。令和7年度の一般会計は308億7,000万円。そのうち自主財源は102億8,420万円で33.3%、依存財源が205億8,580万円で66.7%でした。使えるお金の3分の2は、国や県から回ってきたものです。

いちばん多い収入は市税ではありません。地方交付税が111億5,468万円で、市税48億6,855万円の2倍以上あります。

出ていくほうも硬くなっています。経常収支比率は99.7%で県内ワースト2。過去の借金を返す公債費は38億8,683万円で、市税収入の8割にあたります。いちばん大きな支出は民生費の96億6,186万円(31.3%)で、市民1人あたり約26万円が福祉に回っている計算になります。

壊れているというより、外からの仕送りで形を保っている、という言い方のほうが近いと思います。

「生きがいはあるか」への、いまの答え方

最後に、市自身が置いた目標の動き方を書いておきます。

10年前の人口ビジョンで、市は2060年の目標人口を3万人としていました。国立社会保障・人口問題研究所の推計(19,842人)より1万人多い、意志のある数字です。それが第3次総合計画では2万人になりました。パブリックコメントの回答によれば、その2万人ですら、合計特殊出生率が現在の1.26から2.05まで回復し、転出と転入が釣り合うという前提を置いて出した数字です。

市は同じ回答の中で、市民の6割以上が子ども2人以上を理想としているのに実績が1.26であることを、「産みたくても産めない状況」と書いています。

「地方都市の若者に生きがいはあるか」という一文に、20年後の大洲は、目標を1万人下げるという形で答えたことになります。それでも、その2万人という数字は「何もしなければこうなる」の線ぎりぎりに置かれた目標であって、諦めた数字ではありません。ここは読み間違えないようにしたいところです。

大洲とつながったこと

「壊れていく」側と「残していく」側、両方の実例

大洲は、城下町として今も残る町並みを生かした「歴史まちづくり」に力を入れているまちです。

大洲市のあゆみにまとめた通り、空き家だった町家をホテルや店舗として再生する動きが続いています。

キャッスルステイのように城そのものに泊まれる 取り組みや、10年貸しの仕組みで進む城下町再生 は、この本が警告していた「画一的な景観」とは逆方向を向いているように思います。

「壊れていく」側と「残していく」側、両方の実例を知っているからこそ、この本の危機感を軽く受け 流せませんでした。